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言葉:笑福亭円笑コラム

笑福亭円笑の笑われて、今日はなんぼの笑売人

芝で生まれ、神田で育ち、流れ流れて大阪に。京は金閣寺近くに居を構える、江戸生まれの上方落語家 笑福亭円笑がお届けするコラム

言葉

 近頃言葉の乱れが酷い。大いに憂いている方がいらっしゃいます。あたくしも喋ることを業とする者ですから非常に気になります。
 古来、母国語が消滅すると其の国も消滅する。こうした事が言われてます。
 言葉の乱れ。別に総ての責任がマスコミ。殊にテレビ・ラジオにある訳ではありませんが、矢張り其の影響力は大でしょう。
 戦後、日本語をローマ字に変えよう、と訴えた団体がありました。ローマ字にする事に依る利便性や国際的多様性を訴えてました…が、個人的には大反対です。
 話が、このローマ字に関して<飛躍>するかもわかりませんけど。
 今、すっかり一般化した言葉にH<エッチ>。これ男と女のあれの行為を云います。
 この言葉が広まった折、あたし(多分あたしらの年令の方は)はビックリヒャックリでしたネ。
 変態若しくは変態性欲者の事を云ったのです。つまり、ローマ字で変態の頭文字=H。
 Hしたとか。Hしよう。若い人々の間で平気で発せられる言葉。現代では一般用語になって仕舞いました。
 もう何十年も前でしたが、NHKで<貴方が選ぶ美しい言葉>と題する(正式な表題は忘れましたけど)募集をした。
 結果は、ハイと有難う御座居ます。がダントツでした。この言葉の持った清らかさと言いますか感受性。人間関係を増幅・馥郁させる。ハイ・有難う御座居ます。
 実にいいじゃあありませんか。某役者さんの受け売りですが、<ハイ>と言う科白は何十とある。同じ<ハイ>でも、男・女。年令、其の状況、場面。返事の強弱。
 う~ん、言われて見れば正に其の通り。誉められた時のハイ。愛し合う若者のハイ。殺したい程いやな奴に対する反抗期ハイ。
 一流の役者さんから伺った話でして、これ聞いた時、たった2文字でも、いかに奥深いものか。これを、より正しく、より感動的に演ずる役者さんにも凄いものと感心も得心もしたものです。
 さて、前述のHにしろ、美しい言葉にしろ、言葉の持った様々な行動や多様性は、基本的には其の国がもたらした歴史や文化が根源になる筈。
 滅多矢鱈と省略したり、言葉を造成したり、男言葉・女ことば(今、こんな表現すると四の五の云う輩もいる様ですが)が逆転したり…正直わけのわからん時代です。
 あたしなんぞ、古典落語一本ですから、言葉なんぞ聞いてる人が?と思う。沢山ありましょう。尤も、江戸や京・大阪の昔ながらの言葉なんぞ死後に近いですネ。
 よっぐ行って呉れ、うで玉子、せんぐり、ねき…挙げたらキリがないけど使わない。わからない。消えていく。全国同様な現象ですネ。
 国会で、議員が<馬鹿野郎>てェといけないんですョ。昔、吉田茂首相が「バカヤロー!!」ッてたんで国会は解散。
 世に言う馬鹿野郎解散。所が
関西弁でアホな。とかアホな事いわんといてェ。ならば懲罰委員会にはかけられない。
 正に、んナアホな。その一言で人は傷付きます。標語じみた事よくいいますが、現代日本の言葉の乱れ、これが日常化しています。
 これ、喋ると言うか書き始めると原稿用紙100枚じゃァ足りない。殊に次代を荷担う若い人達には<美しい、いい日本語が一杯あります>覚えて使って貰いたい。
 所で、皆さん、是非貴方が経験した美しい言葉・感動の一言。御知らせ戴きますと幸いです。笑福亭円笑でした。

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※作者の意向を最大限尊重するため、文中の表現は原文通りの掲載を基本としております。

落語会情報 笑福亭円笑落語会

笑福亭円笑落語会[出演]
笑福亭円笑 林家染吉 桂米紫 桂春若 笑福亭銀瓶
[日時]
三月二十八日(月) 午後六時半より
[場所]
天満天神繁昌亭(大阪市) 【地図】
[チケット]
前売 2,500円 当日 3,000円
※天満天神繁昌亭にてお買い求めください。

笑福亭円笑 - プロフィール –

笑福亭円笑
上方落語界の重鎮故六代目笑福亭松鶴に入門。上方にあって唯一人江戸の落語を高座に掛ける古典落語一途の噺家。『一回でも多く一年でも長く』をモットーに東京・名古屋・岐阜・松阪・大阪・京都に於いて手造り草の根落語会を開催している。滑稽噺から人情噺までジャンルは広い。東京都出身。京都市在住。
「笑いと人生」「笑いと商い」「笑いと健康」「ハナシ方教室」等を主なテーマとして行政・企業・諸団体等に於いて講演活動を続けている。
2006年国政モニター・2009年市政協力委員を委嘱される。

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