川柳:笑福亭円笑コラム
川柳
人の名前が、そのまま日本の文化になっているものが数々あります。
義太夫なる芸術があります。竹本義太夫と云う人が、こうした芸(音曲)を考え出しました。別名竹本とも呼ばれてます。
着物の染の技法に友禅染なる技術がありますが、これは宮崎友禅なる方が編み出した技術です。他にも浅田飴・哥沢=歌沢とも書きます。端唄(音曲)の芸です。
今日の川柳は柄井川柳の頭文字を取ったもの。日常生活に話題を求め、人情・世上・風刺を鋭く突く。
俳句と違い季語や字数にも制約されないので庶民に受け入れ易く、”サラリーマン川柳”が近年火付役となって、非常にはやっています。
かく言う私メも、京都の川柳の会に身を置いてます。噺家と云う仕事柄、随分と勉強にもなりますし参考にもなります。
この川柳ブームは全国的でして、お好きな方は各所の「川柳会」にかけ持ち参加をされてます。ただ、どちらかと云うと年配の方が多く、余りお若い方は見掛けないのが残念無念。何事もそうですが、やって見ると奥が深い。難しい。でも楽しいものです。
前述の川柳ブームの火付役<サラリーマン川柳>中々う~んと来るものありますネ。
マイナンバー夫妻間でも機密事項
休みます新入社員の紙対応
ましゃロスの妻を救った五郎丸
29回を迎えた第一生命保険が、恒例のサラリーマン川柳応募作から100選の一部ですけれど、夫婦間・職場・人間関係を絡めた作品が多いですネ。
それと、入選した川柳など見ると、其の時代背景なり社会性がわかる。面白いです。
パソコンを知らない部長が機種選び
連れ込むな急に泊まれない
お茶入れた憎らしいから指入れた
運動会抜くなその子は課長の子
等々、卒直で人生を吐露してますから、あたくし達噺家も、この川柳をメシの種にしている輩もいますョ。そこで
噺家は世上のアラでメシを喰い(立川八王子作)
噺下手笑い上戸に助けられ(五代目古今亭志ん生作)
干物ではサンマは鯵にかなわない(同上)
噺家でも後世に残る迷作はあるもの。
川柳をやってまして思うに、言葉をなるべく多く知っていた方がいいですネ。
それと表現力。例えば、好きな人を表現するのに”愛してる”もあれば”いとしい””悲しい”もある。
でも、花に例えた場合は何んな花だろう…とか。その当りのコツが判ると楽しいものです。更に、あたしは”風刺”ですネ。
金持にしか判らない悩み、不安、反対に貧乏なあたくしなんぞ開き直りの人生続き。
足りないヨ。もっと寄ってナ福沢さん(万札ですネ)
通帳の数の割には残がなし
これ、円笑メの抜けた(選ばれた)句の一ツです。かと思えば
糖尿になる程吸いたい甘い汁
なんて、どうも貧乏根性が抜けません。
所で、人名が文化名にと申しましたが…、水死人の事「土佐衛門」てェ云います。江戸時代の力士で成瀬川土座衛門なる人が実在してました。
この力士は色白でアンコ(太ったタイプを云う)型で、炊いたご飯つぶが水に落ちる。そうするとふやけてブクブクになります。
白くふやけた姿と成瀬川の姿が似ていた処から、水死人=土座衛門。余り、と云うより気毒な残照になって仕舞いました。
川柳を楽しまれていらッしゃる方が居りましたら、是非貴方さんの<川柳>を御寄せ下さいませ。
マイナンバー女房にバレてマイッターナンバー!?
笑福亭円笑でした。
※作者の意向を最大限尊重するため、文中の表現は原文通りの掲載を基本としております。
笑福亭円笑 - プロフィール –
上方落語界の重鎮故六代目笑福亭松鶴に入門。上方にあって唯一人江戸の落語を高座に掛ける古典落語一途の噺家。『一回でも多く一年でも長く』をモットーに東京・名古屋・岐阜・松阪・大阪・京都に於いて手造り草の根落語会を開催している。滑稽噺から人情噺までジャンルは広い。東京都出身。京都市在住。
「笑いと人生」「笑いと商い」「笑いと健康」「ハナシ方教室」等を主なテーマとして行政・企業・諸団体等に於いて講演活動を続けている。
2006年国政モニター・2009年市政協力委員を委嘱される。
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