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体に合った食物を摂る薬食同源レシピ チャイナハーブ研究家:向當充子 「自分の体に合った食事を自分で考える」ことができるよう、四季の食材・香辛料(ハーブ)を使ったレシピをご紹介していきます。

 

第44回 夏の養生について 〜心を大切に〜

●心(しん)の負担が重くなる季節

 明日5月6日はいよいよ立夏ですので、今日は夏のお話をいたしましょう。
 夏は五行表を見ていただくとおわかりのように、暑さが象徴的な季節です。
 によって汗をかくと体の水分が消耗し血液が濃縮するので、心の負担が重くなります。さでイライラすると心煩(しんはん)という状態になります。
 対処方としては、涼しい食べ物をとることと、心を養う食物を食べることが考えられます。
 夏の野菜、トマト、キュウリ、スイカ、トウガン、ナスなどはいずれも涼性の食べ物で、暑さを取り除くとともに夏の体を補います。積極的に取り入れて、暑さを和らげましょう。夏の風邪に銀翹散(ぎんぎょうさん)という処方がありますが、この処方の名前の由来となっている生薬金銀花(きんぎんか、スイカズラ)、連翹(れんぎょう)はいずれも涼性で、にも入りますので理にかなっています。
 心を養う、心を落ち着かせる食物としては、蓮の実、小麦、百合の根、蓮根などがあります。
 苦瓜(ニガウリ)などのものは陽気を下に降ろして、陽気を抑える作用があります。お茶も苦味です。
 そしてできるだけ早く寝るようにしましょう。夜は陰を養います。できればお昼寝をすると、体力の消耗が違います。

●冷やしすぎに注意

 もうひとつ、日本の夏で注意しなければならないのは、冷たいものの摂り過ぎと、クーラーの使いすぎです。冷蔵庫とクーラーのない生活は考えられなくなってしまいましたが、夏に汗をかかないと、熱が体内にこもり病気を複雑にします。また冷やしすぎで陽気を損なうと、回復する力が弱くなるのです。
 夏の食事を思い出してください。

  1. 苦瓜の金山寺味噌炒め (第5回で紹介)
    苦瓜(ニガウリ)は心・肝に入りますので、疲れを取り、心をおだやかにし、視力の回復にも役立ちます。
  2. セロリと百合根の炒め物 (第20回で紹介)
    肝・心の熱を下げ、精神安定の効果が期待できます。
  3. 荷葉蓮子鶏(蓮の実の蓮の葉包み) (第42回で紹介)
    蓮の実と鶏肉を蓮の葉で包んで蒸したもの。脾胃を滋養するとともに、精神安定にも働きます。
  4. ナスとトマトの炒め物 (第9回で紹介)
    まさに夏の食材です。

●心の働き

 心は臓腑の中で君主とされ、一番重要な臓です。心の機能をお話しますが、以下は五行表を参照しながら読んでください。
1)神志(しんし)をつかさどる
広義の神(しん)は人体の生命活動が外に現れるものです。たとえば人体の形・顔色・目つき・言語の応答・姿勢や 動作などに表情としてでています。
狭義の神は神志であり、人の精神・意識・思惟活動をさします。
心の機能が正常で気血が充分であれば、意識は明瞭で思考も敏捷です。
精神・意識・思惟活動の異常は、焦燥感・睡眠が浅い・多夢などの症状となって現れます。
重篤になると、意識障害・痴呆・狂躁などの精神異常が発生します。
2)脈をつかさどる
心の気が血を推動(すいどう)して脈中に運行させ、全身各部を流れ滋養作用を発揮します。心臓の働きに近いですね。
血の正常運行は心の気の充実、血の充満、脈の通りをよくするように働きます。
 異常であれば血流不調により、顔のつやがなく、脈が細くなり、さらに進むと、顔色暗く、唇や舌が青紫になり、息切れや胸の痛みとなって表れます。
3)脈・顔色・舌をつかさどり、汗を生じる
心気や心血の充足度が脈・顔色に反映されます。
また、心の機能が正常であれば、舌質は紅潤で舌は自在に活動でき、味覚も正常です。心血が不足すると、舌質は淡白になり、心火が旺盛になると舌尖が赤く腫れて痛み、口内炎を生じます。心血が滞ると舌質は暗紫となります。
汗の出すぎは軽い、または激しい動悸や、体がだるいなどの症状となります。心気虚となると自汗(じかん)となり、暑くないのに汗が出るようになり、心陽虚となると汗が滴るように出ます。
 このように、心の陽気は血液循環を動かし、生命活動を維持する重要な役割を果たしています。
 同時に、心血の栄養は、呼吸によってもたらされた肺からの清気と、脾・胃の消化活動によってもたらされた水穀精微(すいこくせいび)といわれるエネルギーで成り立っており、心とそのほかの臓腑間の連携が必要になっています。
 この夏のお話で、五臓全てのお話が終わりました。それぞれの季節にそれぞれの臓を大切にする食物を自然からいただいて次の季節に備え、1年は自然と人体が一体となってめぐっていることがわかりますね。

☆次回はナツメの予定です。棗を使って粽(ちまき)を作りましょう。どうぞお楽しみに。

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