未届けの有料老人ホームが1割も　病院やケアマネがやむを得ず利用か

在宅介護や特養が利用しにくいためか

有料老人ホームは老人福祉法で福祉施設としての届け出を自治体に行うことが義務付けられています。

しかし、厚生労働省が2016年に行った調査では、全国にある有料老人ホーム1万2946施設のうち、少なくとも1207施設が届け出をせずに施設を運営する「未届け有料老人ホーム（無届け介護ハウスとも）」であることが確認されました。

そこで厚労省は外部機関に委託し、これらの未届け施設の実態を調査するためアンケートを送付し、225施設から回答を得ましたが、意外な事実も判明しています。

アンケートでは入居者の入居経緯や紹介元を複数回答で確認していますが、「病院や診療所から紹介された」との回答は70.7％、次に「ケアマネジャー」の68.9％となっていたのです。

介護に携わる専門職の人たちが未届け施設を紹介する理由について調査では確認されていませんが、退院後に必要な在宅介護が充実しておらず、条件の厳しい特別養護老人ホームや高額な有料老人ホームに入所するのも難しいため、安価で入所しやすい未届け施設をやむなく紹介しているのではないかと、一部で報道されています。

実際に調査でも入居動機は「ひとり暮らしで家族等の支援がないため」「病院から退院後、自宅に戻れないため」「介護が必要になったため」といった回答が多くなっていました。

設備などは整備されている

2009年には群馬県の未届け施設で火災が発生、多数の入居者が犠牲になり、未届け施設のずさんな管理が問題になったこともありました。

しかし、今回の報告書で回答したほぼすべての施設が  火災報知機やスプリンクラー、耐震構造など防災上の設備は用意していると回答しており、設備面の問題は少なそうでした。

未届けとはいえ、中には有料老人ホームとしての要件をあと少しで満たすことができず、仕方なく未届けで運営しているという施設もあるとされており、すべてが悪質な業者であるというわけではないと思われますが、福祉施設を利用する際には届け出の有無にも注意する必要があるかもしれません。