高齢者の万引きなど、犯罪を予防するための相談窓口があること、ご存じですか?
高齢者の万引きや軽犯罪のニュースは珍しくなく、たまに耳にします。
実際に高齢者による万引きはかなり増加してきているようです。
万引きというと軽い罪のように感じますが、窃盗罪であることはご存じの通り。
高齢者が万引きを行う原因はさまざまですが、認知症の初期症状や孤独などにより発生することが多いようです。
万が一、ご自身や高齢の親が軽犯罪を起こした場合、どのように今後対処していくのか相談できる「高齢者よろず相談窓口」についてご紹介します。
高齢者の万引きが頻繁に起きている理由は?
最近、高齢者による万引きが急増してきているそうです。
なかでも女性高齢者による万引きが深刻な問題となっています。
東京都で行われた「万引きに関する有識者会議」(https://www.tomin-anzen.metro.tokyo.lg.jp/chian/kaigi/manbiki/)が発表した情報によると、刑法犯の認知件数は、戦後最悪の治安情勢といわれた平成14年の約30万件をピークに、平成28年には約13万5,000件と大幅な減少を果たしました。
この刑法犯のなかに万引きは含まれており、全発生件数の約1割に相当するそうです。
万引きの認知件数は約1万5,000件。
最近の万引きの特徴は正面が少なくなり、高齢者が増加しているのだとか。
実際に割合で見てみると、平成22年には少年が30パーセント、高齢者が21パーセントだったのに対し、平成28年には少年が18パーセント、高齢者が29パーセントにまでなりました。
万引きは再犯率が高いのが特徴で、特に高齢者においては捕まった人の58.7パーセントが過去に万引きなどを含む犯歴があるそうです。
警察庁も同様のデータを公表しています。
参考
警察庁:犯罪統計
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/statistics.html
この資料では店で万引きが見つかり、警察に通報されていないケースは含まれていません。
万引き犯を捕まえた店は警察に通報せず、店の中だけで処理をすることもあるようで、完璧に正確なデータとは言いがたい点はご了承ください。
全体的な件数は2005年頃まで増加傾向にあり、現在に至るまで減少傾向にあります。
ただ、高齢者と未成年に絞ってデータを見たとき、東京都の会議と同様の傾向が見られました。
2018年、未成年者における万引きの検挙人数は6,449人。
一方で高齢者は2万4,348人です。
もちろん、未成年者の方が数が少なく、高齢者の方が数が多い、という意見もあるかと思います。
念のため該当年齢階層人口に占める万引き検挙者の比率を見ていきましょう。
総務省統計局には人口推計が掲載されており、これによって1歳単位の総人口を知ることができます。
これで未成年者、高齢者の万引きにおける人数比率を見ていくと、未成年者が万引きで検挙されるケースは大幅減少。
一方で高齢者はずっと横ばい〜微減といった傾向が見られます。
つまり、未成年者の万引きは減っている一方で、高齢者の万引きはほとんど減っていない、ということがいえます。
なぜ万引きをする?
なぜ高齢者の万引きは減らないのでしょうか?
上でご紹介した「万引きに関する有識者研究会」の資料によると、要因として以下のものがあげられています。
- 本人の意識における生活苦
- 体力・認知機能の低下
- ストレス耐性の弱さと万引きのリスク認識の低さ
- 社会関係性の希薄
- 高齢者の万引き防止に向けた支援の弱さ
それぞれの項目について詳しくは「万引きに関する有識者研究会」の資料に記載されているのでそちらをご覧ください。
簡単にご説明すると、万引きで検挙される高齢被疑者は一般高齢者と比べ、やや世帯収入が低い傾向にあるようです。
ただし、客観的に見ると、生活困窮レベルにある、といえる人は少ないそうです。
主観的に、生活が苦しい、生活レベルが低いと考えている傾向が見られるよう。
また、高齢被疑者は配偶者がいない人が約6割。
独居している人が5割弱で、家族によるサポートが薄い傾向にあるそう。
また、高齢万引き被疑者の多くは微罪処分、不起訴などで釈放されることも多く、社会復帰が早い傾向にあります。
しかし、被疑者へのサポートが弱く、万引きで検挙された人はその後のサポートこそが大切だ、と同研究会は話します。
みなさんの周りにも万引きグセが付いている人はいませんか?
認知症による犯罪もこれから増加するかもしれない
何度捕まっても万引きが辞められない、盗癖が昔からある、という人もいるでしょう。
しかし、なかには今までそんなことをしたことがないのに、突然万引きしてしまう人もいます。
その原因は認知症かも知れません。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など、一言で認知症と言ってもさまざまな種類があります。
そのなかでも「前頭側頭型認知症」は、言葉に関係する部位に影響を及ぼしてしまう認知症です。
ほかの認知症と比較して気がつきにくく、気づいたときには手遅れ…なんてことも。
前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉前方が萎縮してしまい、発症。
言葉を発したり、理解したりする部位に発症してしまうため、感情コントロールが難しくなったり、理性的な行動をとりにくくなったりします。
そのため、その人の「人間らしさ」が失われてしまうともいえる「残酷」な認知症です。
前頭側頭型認知症の発症は早く、50歳から60歳代には発症する人も。
若年性認知症ともいい、緩やかに症状が進行していくのが特徴です。
前頭側頭型認知症を患うと、常同行動、異食、感情変化、反社会的な行動が多くなるといわれています。
万引きというと反社会的な行動ですよね。
万引き、痴漢を働いてしまったり、信号無視で自動車にひかれてしまったり、といった行動をとってしまうのです。
もしも急に万引きなどで捕まることがあった、という場合は認知症を疑ってみても良いかもしれませんね。
前頭側頭型認知症は物忘れなどはあまり見られない認知症です。
その代わり、「人間らしさ」を徐々に失っていきます。
物忘れ=認知症という認識を多くの人は持っているので気がつきにくい、というわけです。
認知症は周囲の人が気を配り、気づいてあげなければなりません。
行動が少しでも「おかしいな?」と思ったら、病院に連れて行くなどして、早期発見してあげてくださいね。
高齢者よろず相談とは?
孤立から万引きなどの犯罪を犯してしまう高齢者を救うため、東京都では電話相談ダイヤル「高齢者よろず相談」を設けていました。
匿名で相談可能で、社会福祉士が対応し、支援団体や医療機関に橋渡しを行っていたのです。
残念ながら事業の都合上、2019年12月27日で終了してしまったのですが、再開を望む声は多いといいます。
実際に寄せられた相談は7月から11月で88件。
犯罪関連の相談の内訳は万引きが32件、傷害・暴行が2件など計39件もの相談が寄せられたそう。
本人からはもちろん、その家族からも電話もありました。
万引きは本人も悩んでいるし、周りの人も悩んでいるかもしれません。
もしも、万引きがクセになっている人は辞められるよう、専門医を受診するのもおすすめ。
家族も、もしかすると認知症の恐れがある、という点を理解し、病院を探してみましょう。
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