背筋がゾクッ！ 怖～い怪談

夏ともなれば、肝試しにお化け屋敷、ホラー映画などが人気を集めます。中でも、落語や講談、歌舞伎などの「怪談」は、背筋がゾクッとするような話ばかり。暑い夏の夜は「怪談」で涼んでみませんか？

怪談の世界

物の怪（もののけ）の物語

炎暑が続く真夏、落語や講談、歌舞伎など古典芸能の世界で「怪談」が演じられる機会が増えます。怪談は、幽霊や妖怪といった正体不明の存在や説明のつかない怪奇現象を物語にし、恐怖や怪しさを体感させます。
怪談にはいくつかの種類があります。作家が独自に創作したものや、中国の伝奇小説を翻案したもの、伝説をもとにした説話、実際にあったこととして語られた話など、多岐にわたります。

今なお生き続ける古典

古典怪談では、江戸後期の作家・上田秋成が著した『雨月（うげつ）物語』や落語家・三遊亭円朝作の落語『怪談牡丹灯籠（ぼたんどうろう）』、随筆家が奇談・怪談を集めた見聞録『耳袋』、明治期の文学者・小泉八雲による『怪談』などが知られています。

怪談にまつわる謎

夏に怪談が語られるのはなぜ？

娯楽の少なかった昔、人気を呼んだ芝居文化が関わっていると言われています。お盆の時期（旧暦7月中旬）になると、霊が帰ってくるとされ、先祖の霊を迎えて供養しますが、かつては霊の中に成仏できずにいる怨霊や無縁仏が存在すると考えられていました。そこで、お盆に演じる歌舞伎は「盆狂言」と呼び、鎮魂の意味を込めて霊の無念さや苦しみを描いた怪談を演じるようになり、夏の風物詩として定着していきました。

怪談でゾクッとするのはなぜ？

恐怖というストレスが体を攻撃するのに対して防御反応が起こり、全身の活動力を高める交感神経が働いて、血液が心臓に集められます。そのため、自律神経反射として毛細血管が収縮し、皮膚表面の温度はわずかに下がります。同時に、立毛筋（りつもうきん）が収縮して鳥肌が起こります。このときのゾクゾクッとした感覚を、脳内で「寒い」と判断するのです。

日本三大怪談

『東海道四谷怪談』

夫・民谷伊右衛門と暮らす病弱な妻・お岩。あるとき、隣家の伊藤喜兵衛が伊右衛門を孫娘・お梅の婿に迎えたいがために、妙薬と偽った毒をお岩に飲ませる。毒薬のせいでお岩の顔は醜く変貌し、見捨てられたお岩は怨念を抱いたまま死んでしまう。その後、伊右衛門はお梅と婚礼を上げる。しかし、お岩の亡霊を見た伊右衛門は錯乱。喜兵衛とお梅を手にかけて逃亡するが、最後はお岩の妹・お袖の夫によって討たれる。
四代目鶴屋南北の代表作で、歌舞伎に仕立てられて有名に。

『番町皿屋敷』

江戸の番町に住む旗本・青山主膳に仕えるお菊。ふとした過ちから、青山家家宝の10枚1組の皿の1枚を割ってしまう。お菊は責められて庭の古井戸に投げ込まれる。それ以来、夜な夜な古井戸からお菊の亡霊が現れ、「1枚、2枚……」と皿の数を数え、1枚足りないと恨み言を漏らす。やがて不祥事が続いた青山家もお家断絶に──。お菊の亡霊は、高僧が供養して成仏したとも、土地の守り神になったともいわれている。
元禄期ごろから広まった怪異伝説の一つ。番町（東京都千代田区）や播州（兵庫県姫路市）だけでなく、東北から九州まで各地に類例の怪談がある。

『怪談牡丹灯籠』

浪人・萩原新三郎は、旗本の息女・お露と身分違いの恋に落ちる。牡丹があしらわれた灯籠を手に、「カラ～ンコロ～ン」と下駄の音を響かせながら訪ねてくるお露と新三郎は逢瀬を重ねる。しかし、お露はすでにこの世を去り、幽霊になっていた。新三郎はお札を使ってお露を遠ざけようとするが、結局封印が解かれてしまう。後日、お露の棺には新三郎の亡骸が入っていたという。
中国の小説をもとに、落語家・三遊亭円朝が落語に仕立て、歌舞伎でも人気の演目である。