【栗の花】
花栗のちからかぎりに夜もにほふ 　　　飯田龍太
栗の花紙縒の如し雨雫 　　　　　　　　杉田久女
海荒れに汐汲む海女や栗の花　　　　　 山口誓子
栗咲く香血を喀く前もその後も 　　　　石田波郷
花栗の楽湧くごとき夜を逢ふ 　　　　　上田五千石
家建ちて闇新しき栗の花　　　　　　　 高橋悦男
栗の花丹波は雲の厚き国 　　　　　　　茨木和生
恵那山の雨叩きゆく栗の花 　　　　　　宇佐美魚目
栗咲く香この青空に隙間欲し 　　　　　鷲谷七菜子
栗の花匂ふ若狭のほとけ道 　　　　　　佐川広治
栗の花夕波ちから収めつつ 　　　　　　朔多 恭
山雲の野に下りしより栗の花 　　　　　水原秋桜子