【夏風邪】
夏風邪はなかなか老に重かりき　　　　　　　　 高濱虚子
眠たさの泪一滴夏の風邪 　　　　　　　　　　　野澤節子
夏風邪の六日の髯を剃りにけり 　　　　　　　　春日五橋
夏風邪や老の疲れといふ病 　　　　　　　　　　松根東洋城
夏風邪や遊び寂しくなりてより 　　　　　　　　吉井 勇
夏風邪をひき色町を通りけり 　　　　　　　　　橋 閒石
夏の風邪半月傾ぎゐたりけり 　　　　　　　　　加藤楸邨
鼻汁溝泥(はなどぶ)のごとくかなしや夏の風邪 　 山口青邨
夏風邪の児の髪日向臭きかな 　　　　　　　　　高野 芳
夏風邪の母にほほづき買ひにけり 　　　　　　　角川春樹
夏風邪や乙女の瞳をして演歌聞く　　　　　　　 安斉君子
貝殻を踏む夏風邪の力抜け 　　　　　　　　　　殿村菟絲子