【萩】
一家に遊女もねたり萩と月　　　　　　 芭　蕉
黄昏や萩に鼬の高台寺 　　　　　　　 　蕪　村
萩の風何か急かるる何ならむ 　　　　　 水原秋櫻子
白萩の雨をこぼして束ねけり　　　　 　 杉田久女
白萩のしきりに露をこぼしけり 　　　 　正岡子規
鯉の子のおどろきやすき萩の風　　　 　 望月皓二
萩の庭見せて小暗き木曾の宿 　　　 　　米住小丘子
白萩のつめたく夕日こぼしけり 　　 　　上村占魚
おとろへし父の酒量や萩白し　　　　　　福永耕二
萩の葉のこまごまと雨冷えにけり　　　　日野草城
ある日ひとり萩括ることしてをりぬ　　　安住 敦
虻が来て萩が静かに賑はひぬ　　　　　　細見綾子
小さな風大きく見せて萩の花　　　　　　中野博夫
萩の雨傘さして庭一廻り 　　　　　　　　中村吉右衛門
松の風落ちては萩の風となる 　　　　　　岸風三楼
やはらかく抱きて萩を括りけり 　　　　　畠山譲二
蝶々に花の少なき山の萩　　　　　　　　 倉田紘文
萩の風ほつほつと花咲きそめし 　　　　　高浜虚子
萩咲いて家賃五円の家に住む 　　　　　　正岡子規
ほろほろと蝶あがるなり萩の中 　　　　　久保田万太郎