【冬終る】
水に翳そひいつまでも冬去らず 　　　　　　　長谷川双魚
バラの刺白く三角冬も終る　　　　　　　　　 山口青邨
ひそかなる亀の死をもち冬終る 　　　　　　　有馬朗人
湯屋の前月濃くて冬去りにけり　　　　　　　 大野林火
長き冬去ると或る朝言ひて起く 　　　　　　　細見綾子
雲は鳴かず大オホツクの冬尽くる　　　　　　 飯田蛇笏
冬終る顔押し包む蒸しタオル 　　　　　　　　岡本 眸
冬終る封筒の中空色に 　　　　　　　　　　　有馬朗人
冬了る底知れぬものと思ひしが　　　　　　　 相生垣瓜人
冬終る鯖の空缶寮に積み　　　　　　　　　　 平尾伊佐雄
冬の果蒲団にしづむ夜の疲れ　　　　　　　　 飯田蛇笏
うらぶれし冬にも心遺すなり 　　　　　　　　相馬遷子
冬去りぬうぶすなの木に子がのぼり 　　　　　長谷川双魚