1. ものの芽や大地の起伏色づきぬ
2. その中に鳥運びきしものの芽も
3. ものの芽や片膝つきて風を聞く
4. ものの芽に小首傾げる雀かな
5. 土手歩むものの芽踏まぬを心がけ
6. ものの芽に首突っ込んで雀二羽
7. かげろふや島に短き滑走路
8. 陽炎の空も歪めてしまひけり
9. 陽炎や揺らぎの見ゆる川向かう
10. 軋み行く一両電車かぎろへり
11. 陽炎や波間に揺れる大漁旗
12. 陽炎を踏んで古城にひとり旅
13. 陽炎に包みこまれて休日勤
14. 落椿しづかに暮るる高麗の郷
15. 椿落つ星の触れ合ふ音立てて
16. 藪椿抜けて潮騒犬吠崎
17. 神の道夕陽に光る紅椿
18. 晩年は清貧がよし白椿
19. 夕暮れの迫りつつあり椿落つ
20. 層塔の朱塗り黒ずむ鳥曇
21. 鳥くもり遠くしてゆく街の音
22. 玄海の神宿る島鳥曇
23. 三陸の海女の磯笛鳥曇
24. 鳥曇寄せては返す波頭
25. 峡谷に架かる吊橋鳥曇