【残る鴨】
残りしか残されゐしか春の鴨 　　　　　　　 岡本 眸
つらなれる芥の沖の残り鴨 　　　　　　　　 五十嵐播水
ひかりなき藻に羽づくろふ残る鴨 　　　　 　桂樟蹊子
残り鴨ひとりはむしろ潔し　　　　　 　　　 樋笠 文
残り鴨ばかりとなりて争はず 　　　　　 　　鶴丸白路
残り鴨相寄る水の広さかな 　　　　　　　 　山田山彦
大淀の逆波がくれ残る鴨 　　　　　　　 　　澤田弦四朗
残る鴨二羽ゐて睦むこともなし　　　　　　　伊藤伊那男
水脈を引く光となりし春の鴨　　　　　　　　我部敬子
孤でもなく陣でもなくて春の鴨　　　　　　　杉阪大和
共にとは言へぬ間合や春の鴨　　　　　　　　長谷川明子
天空も水もまぼろし残り鴨 　　　　　　　　　鷲谷七菜子