【風死す】
風死して鉛の色に湖たたへ 　　　　　　　富安風生
風死んで黒白分つ一街路 　　　　　　　　有馬朗人
風死して無聊の蔓の先であり 　　　　　　かとうさきこ
合はせ酢をつくる厨に風死せり 　　　　　岡本差知子
風死んで三百尺の岩の壁　　　　　　　　 高橋悦男
風死んで暗がりの沼戸をとざす　　　　　 佐藤鬼房
風死んで黒白分つ一街路　　　　　　　　 有馬朗人
風死して旧街道の半旗かな 　　　　　　　中田朗子
風死すや大き柩の恐山　　　　　　　　　 手塚美佐
天が炎え地が灼け風が死ににけり 　　　　相生垣瓜人
鶏頭や仏間に入りし風死んで　　　　　　 能村登四郎
子を叱る聲のどこかや風死して　　　　　 佐々木六戈雨