【苧殻】　
いくらかはおのれ涼しみ苧殻焚く 　　　　森 澄雄
おほわだの父呼ぶ苧殻焚きにけり　　　　 板東紅魚
かき立つる焔ひととき苧殻焚く　　　　　 深見けん二
こまごまと折りねんごろに苧殻焚く 　　　深見けん二
とある路地苧殻たく火のほのぼのと　　　 長谷川素逝
はうろくにあまる苧殻の燃えにけり 　　　久保田万太郎
ひとたばの苧殻のかろさ焚きにけり　　　 轡田 進
一家して苧殻焚く火をかばひ合ふ 　　　　鈴鹿野風呂
一対の太さ揃はぬ苧殻箸　　　　　　　　 清水佳津子
世に軽きものの極みの苧殻買ふ 　　　　　手島靖一
暮らしむき見せぬ男や苧殻焚く　　　　　 石川桂郎
生きのびし思ひの苧殻焚きにけり　　　　 能村登四郎
老の手にほきほき折るる苧殻の火　　　　 後藤夜半