【残る虫】
残る虫芭蕉生家の通し土間 　　　　　　有馬籌子
残る虫息をつなぎて鳴き合へり　　 　　山田節子
葡萄酒のねむれる蔵に残る虫　　　　　 石原八束
百花園の塀のうちそと残る虫 　　　　　岸田稚魚
味噌蔵の土間の湿りや残る虫 　　　　　内山由美子
鳴くほかのなければ鳴いて残る虫 　　　新明紫明
大仏の膝に遊行の残る虫　　　　　　　 小泉三枝
夕映の残る虫より淡くして　　　　　　 相馬遷子
残る虫弥勒のそばを離れざる　　　　　 大野崇文
残る虫鳴く刈込の奥ならむ　　　　　　 水原秋桜子
残る虫ふとこの仕事何のため　　　　　 岡本 眸
残る虫母と山河を隔てたり　　　　　　 鍵和田秞子