【紅葉①】
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉　　 　三橋鷹女
かざす手のうら透き通るもみぢかな　　 　大江丸
障子しめて四方の紅葉を感じをり 　　　　星野立子
ほどほどに老いて紅葉の山歩き 　　　　　能村登四郎
伊予晴れて海の匂ひの紅葉寺 　　　　　　井本農一
蒟蒻の刺身ひやひや山紅葉 　　　　　　　井桁白陶
風音は義仲のこゑ谷紅葉 　　　　　　　　高橋悦男
終電車来て灯の点る紅葉宿 　　　　　　　伊藤伊那男
雨にほふ紅葉且つ散るいろは坂 　　　　　佐藤勇奈男
初陣の功の如くに初紅葉　　　　　　　　 後藤比奈夫
谷下りて水に手ひたすうすもみぢ 　　　　細見綾子
栃黄葉ひるがへるとき艶めきて　　　　　 皆川盤水
滝飛沫かかりて崖の照紅葉 　　　　　　　五十嵐波津子
観楓船曳く波うすくうすく展べ 　　　　　堀 葦男
こどもの手いつもあたたか紅葉狩 　　　　岡田日郎