【障子】
暗くとも暮るるに間ある障子かな 　　　小杉余子
障子しむる妻の眼最後までのこる　 　　山口誓子
しづかなるいちにちなりし障子かな 　　長谷川素逝
海しづかなれば障子をあけておく 　　　川島彷徨子
うしろ手に障子を閉めて能役者 　　　　角川春樹
午後といふ不思議なときの白障子 　　　鷹羽狩行
尾長きて冷え俄かなる障子かな 　　　　角川源義
柔かき障子明りに観世音 　　　　　　　富安風生
濤うちし音かへりゆく障子かな 　　　　橋本多佳子
長良川雪待つ舟の白障子 　　　　　　　殿村菟絲子
外よりも内の明るき春障子 　　　　　　杉阪大和
仏壇のちさき障子を貼りにけり 　　　　伊藤伊那男