主役ジム・ブロードベントの名演は、彼なくしてはこの映画がなりたたなかったのではと思わせるものですが、妻役のヘレン・ミレンが抑えに抑えて、主役を盛り立てようとした演技は、「わたしの演技がお分かり?」と、大女優自信満々のパーフォーマンスですね。
これが実話だということに驚きます。イギリス市民の成熟度の高さに脱帽しました。
ラストのラストに007の第一作「ドクターNo」の場面が挿入されています。ドクターNoの海底要塞に囚われたジェームズ・ボンドが、「ウエリントン公爵」の絵がダイニングの一隅に飾られているのを見て、アレと見直す場面がさらりと出てきます。「ドクターNo」は1962年の映画、この絵の盗難事件は1961年。この盗難事件が、まだイギリスの人々の記憶に鮮明な時期。「ドクターNo」の監督のイタズラ心が愉快でした。(いらざる雑音という声もあるでしょうね)
地味な作品ですが、心が豊かになる映画を観たい方、必見ですね。