【麦の秋】
新しき道のさびしき麦の秋 　　　　　上田五千石
汽車の扉を手で開け降りる麦の秋 　　堀之内和子
能登麦秋女が運ぶ水美し　　　　　　 細見綾子
山の上たひらに麦の秋となる 　　　　大野林火
角帽の金章は稲麦の秋 　　　　　　　高橋悦男
赤富士の胸乳ゆたかに麦の秋　　　　 澤木欣一
麦秋や葉書一枚野を流る　　　　　　 山口誓子
鈍行の気儘な旅や麦の秋 　　　　　　竹内光江
麦秋の野を従へて河曲る 　　　　　　内藤吐天
麦秋や家ごとに架けて土の橋　　　　 大石悦子
麦の秋さもなき雨にぬれにけり 　　　久保田万太郎
麦秋の中に近江の湖をおく 　　　　　大高霧海

明日の兼題は、「薄暑」です。