6月前半のサークル句会の選句結果です。今回は、一席、二席とも、panapanaさんのそれぞれ「木下闇」句と「さみだれ」句、三席は、苦瓜さんの「岩つばめ」句と、山椒の実さんの「花菖蒲」句でした。いずれの句も固有名詞のもつ強さを季語によって見事に引き出した秀句でした。次回は、梅雨真只中ですね。また、よろしくお願い申し上げます。

一席　9点句（◎◎◎◎◎〇〇〇〇）
　　48.鈴の音や女人高野の木下闇　　　　　　　　panapana
二席　7点句（〇〇〇〇〇〇〇）
　　38.さみだれにけぶる比叡の大師堂　　　　　　panapana
三席　6点句（◎〇〇〇〇〇）
　　18.大歩危の崖の古道や岩つばめ　　　　　　　苦 瓜
　　29.蔵ならぶ八幡堀の花菖蒲　　　　　　　　　山椒の実
5点句（◎◎〇〇〇）
　　79.葭切や草に隠るる捨て小舟　　　　　　　　しんい
　　　（〇〇〇〇〇）
　　37.座布団を二つ折りして昼寝かな　　　　　　泥 舟
4点句（◎〇〇〇）
　　12.幾千の酢甕を叩く走り梅雨　　　　　　　　ワシモ
　　24.鎌倉の闇を焦がせる薪能　　　　　　　　　しんい
　　25.神宿る千年杉や五月闇　　　　　　　　　　夢追人
　　　（〇〇〇〇）
　　58.隣町風に運ばる祭り笛　　　　　　　　　　俊 雪
　　66.端居してなかなか詰まぬ詰将棋　　　　　　泥 舟
3点句（◎〇〇）
　　01.青葦を分け入り進む手漕ぎ舟　　　　　　　山椒の実
　　　（〇〇〇）
　　04.朝の湯に眩しき山の若葉かな　　　　　　　しんい
　　10.蟻の列企業戦士のころをふと　　　　　　　夢追人
2点句（◎〇）
　　23.黴の香を纏ふ本棚開け放つ　　　　　　　　TOTORO
　　33.校庭の空の広さや夏つばめ　　　　　　　　昇 峰
　　　（〇〇）
　　02.明易し日の出いまかと待つ山頂　　　　　　夢追人
　　05.紫陽花に埋め尽くされて明月院　　　　　　俊 雪
　　27.草笛や四肢のびやかに反抗期　　　　　　　しんい
　　30.薫風や満艦飾の日本丸　　　　　　　　　　panapana
　　59.土間の風そよりと送る夏のれん　　　　　　方 舟
　　65.麦秋や生まれし子豚八頭目　　　　　　　　TOTORO
　　72.灯が点る植田の中の一軒家　　　　　　　　そよかぜ
　　75.平穏な喜寿の暮らしや毬の花　　　　　　　そよかぜ
1点句（◎）
　　56.でで虫に撓む草の葉刈り取らず　　　　　　方 舟
　　67.蓮の浮き葉揺らすは黒き鯉の影　　　　　　しょうく　
　　　（〇）
　　07.紫陽花の白に色あり水彩色　　　　　　　　俊 雪
　　15.犬小屋の向き替へてなほ西日濃し　　　　　方 舟
　　20.柿の花白寿の友と逢ふ奇遇　　　　　　　　麦 秋
　　22.黴数多人生変へし哲学書　　　　　　　　　夢追人
　　26.川漁の日がな一日麦藁帽　　　　　　　　　苦 瓜
　　41.散水の栓全開に虹の立つ　　　　　　　　　方 舟
　　57.点滅の度に蛍火闇焦がす　　　　　　　　　昇 峰
　　60.夏燕雨は斜めの崖つ縁　　　　　　　　　　TOTORO
　　61.夏帽子振って別れし峠道　　　　　　　　　Tiger 6
　　62.二条大麦うれて近江の空焦げり　　　　　　山椒の実
　　71.半纏に袖を通して祭り待つ　　　　　　　　俊 雪
　　76.まだ残る瓦礫の空や夏つばめ　　　　　　　昇 峰
　　78.麦の穂や潮騒かぶる九十九里　　　　　　　panapana
無点句
　　03.朝の窓開けて隣家の柿の花
　　06.紫陽花の一花と化せり隠れんぼ
　　08.後戻りできぬ一秒時は金
　　09.雨蛙デュエットしする丸舞台
　　11.行き交ひの船を見遣りて薔薇の園
　　13.幾度も手水を使ふ暑さかな
　　14.一枚の田植え忘れし蓑の下
　　16.老二人気分は青春バラの園
　　17.大城の堀に映りし影涼し
　　19.落し文拾うてみても悲し文
　　21.風のなきヨットハーバー夏つばめ
　　28.くさや焼く島の夕風ビールほす
　　31.濃紫陽花葉にも水玉光らせて　
　　32.コイン入れ市電を降りる楠若葉
　　34.強力の後に列なす登山帽
　　35.子供無事よき知らせ聞き梅雨に入る　
　　36.早苗田に潮の香りの走り雨　
　　39.五月雨にテント繋いで朝の市
　　40.五月雨や溜まり写りし白い脚
　　42.下闇に河童現はる紙芝居
　　43.菖蒲咲く水の昏きに白極め
　　44.菖蒲見る後期高齢杖の音
　　45.新婚の小さき部屋に青簾
　　46.水田に光をこぼし飛ぶ蛍
　　47.涼しさや公園ベンチ奪い合ひ
　　49.青春の思い出蛍余呉湖畔
　　50.旅ながら無人駅舎の瓶の百合
　　51.旅人の浴衣姿や京の町
　　52.燕の子一羽こぼれて戻らざる
　　53.梅雨籠り法に触れねど不適切　
　　54.梅雨寒で胃炎起こせし陽を待てり
　　55.梅雨晴間青空うつす心字池
　　63.入梅や放置しままの白き甕
　　64.野仏のつばな流しに浴び在す
　　68.花菖蒲東屋までは板の橋
　　69.バラ園のベンチで憩う老夫婦
　　70.薔薇の香の門に佇み人を待つ
　　73.ピカピカの一番風呂や黴退治
　　74.微笑あり苦笑もありて山椒魚
　　77.妙齢のかんばせ仄と青簾
　　80.六月の風に吹かるるお下げ髪

評点につきまして間違いがありましたら、お早めにお申し出ください。
選者（敬称略）

泥 舟　TOTORO　山椒の実　麦 秋　俊 雪　Tiger6　そよかぜ　しょうく　しんい　苦 瓜　ワシモ　panapana　方 舟　夢追人　利 明　secchan　昇 峰