【夜長】
浅草や夜長の町の古着店　　　　　　 永井荷風
長き夜や眼鏡に曇る雨の音 　　　　　成　美
夜長人耶蘇をけなして帰りけり　　　 前田普羅
長き夜や退きてまだ見る職の夢 　　　宇野直治
ふたりとも煙草の切れし夜長かな　　 角川春樹
よそに鳴る夜長の時計数へけり　　　 杉田久女
漁火の北に片寄る夜長かな 　　　　　鈴木真砂女
灰ふかく立てし火箸の夜長かな 　　　久保田万太郎
長き夜の物書く音に更けにける　　　 村上鬼城
一燈を残し夜長の仕事終ふ　　　　　 高濱年尾
夜長し四十路かすかなすわりだこ　　 中村草田男
一つ家に二つの夜長点しけり　　　　 本玉秀夫

明日の兼題は、「薄」です。