12月後半のサークル句会の選句結果です。今回の一席は、6点句で、夢追人さんの「隙間風」句、panapanaさんの「冬ざれ」句、山椒の実さんの「冬空」句が並びました。夢追人さんの長く住み慣れた日本家屋と山椒の実さんの干し蛸には共に上品な俳諧味とペーソスが17文字で巧みに描かれています。panapanaさんにはいつも大変巧い作り方に感心させられています。第二の季語とも言われる固有名詞に寄りかからない佳句が十分にできる力量があるのではと拝察しています。次回もまたよろしくお願い申し上げます。

一席　6点句（◎◎◎〇〇〇）
　　20.木と紙の家百年や隙間風　　　　　　　　　　　夢追人
　　58.冬ざれや唸る竜飛の風の音　　　　　　　　　panapana
　　59.冬空に干されて蛸の十文字　　　　　　　　　　山椒の実
6点句（◎◎〇〇〇〇）
　　05.凍月や開け放しなる西行庵　　　　　　　　　　利 明
5点句（◎◎〇〇〇）
　　10.裏山の青笹を採り年用意　　　　　　　　　　　苦 瓜
　　　（◎〇〇〇〇）
　　06.渦潮を見おろす岬枇杷の花　　　　　　　　　　麦 秋　　　　　　　　
　　　（〇〇〇〇〇）
　　16.寒紅を差してやりたや伎芸天　　　　　　　　　利 明
4点句（◎◎〇〇）
　　33.煤逃げのふらりと入る床屋かな　　　　　　　　さんせん
　　73.礼拝の木椅子冷たき天主堂　　　　　　　　　　さんせん
3点句（◎◎〇）
　　12.大口を開けて本望吊り鮟鱇　　　　　　　　　　しょうく
　　69.湯豆腐や永観堂の帰り道　　　　　　　　　　　苦 瓜
　　　（◎〇〇）
　　19.狐火や菅笠かかる馬籠宿　　　　　　　　　　　panapana
　　44.冬耕や峰を流るる雲速し　　　　　　　　　　　TOTORO
　　65.焼いもの焦げ目に残る火の匂ひ　　　　　　　　さんせん
　　　（〇〇〇）
　　40.小さき手抱かれて合はす初詣　　　　　　　　　俊 雪
　　56.冬ざるる墨絵の様な最上川　　　　　　　　　　panapana
2点句（◎◎）
　　26.匙重くなりて葛湯の透き通る　　　　　　　　　山椒の実
　　74.蓮根のふた節で足る年用意　　　　　　　　　　苦 瓜
　　　（◎〇）
　　54.文机の隅に小振りな鏡餅　　　　　　　　　　　泥 舟
　　　（〇〇）
　　08.湖の面をわたる晩鐘冬霞　　　　　　　　　　　昇 峰
　　18.狐火の王子権現宵参り　　　　　　　　　　　　麦 秋　　　　
1点句（◎）
　　　24.五年日記買ふをためらふ今年また　　　　　　しょうく
　　64.宮当番一人で守る焚き火かな　　　　　　　　　secchan
　　68.ゆつたりと流るる空や蒼鷹　　　　　　　　　　昇 峰
　　75.をちこちの屋根に烏や冬ざるる　　　　　　　　利 明
　　　（〇）
　　01.愛犬と交わす挨拶息白し　　　　　　　　　　　Tiger 6
　　09.海見ゆるナザレの丘や冬の星　　　　　　　　　昇 峰
　　15.館冴ゆるお鶴お弓の木偶芝居　　　　　　　　　TOTORO
　　17.義士祭の衣装そのまま帰宅せり　　　　　　　　夢追人
　　25.最長の影を引きつつ冬至過ぐ　　　　　　　　　俊 雪
　　29.冴ゆる夜の月上弦に尖りをり　　　　　　　　　山椒の実
　　37.漱石忌路面電車で早稲田まで　　　　　　　　　麦 秋
　　45.年の瀬を共に越さんと子の帰り　　　　　　　　雪 子
　　46.土間の隅追えども逃げぬ冬の蠅　　　　　　　　secchan
　　48.塗師の部屋塗師が片付け掃納　　　　　　　　　雪 子
　　57.冬ざれや風の千切るる千曲川　　　　　　　　　panapana
　　62.街なかの寺に一本冬桜　　　　　　　　　　　　山椒の実
　　72.余生なほ一頑張りや年新た　　　　　　　　　　泥 舟
無点句
　　02.曖昧も時に潤い闇汁会
　　03.頭ほどありし文旦もらひけり
　　04.生きている証や白き息を吐く
　　07.埋火の灰になる日を待ち望む
　　11.縁側の猫と戯れ冬麗
　　13.数へ日や誓ひし友の音楽葬
　　14.数へ日や猫のごろごろ聞いてゐる
　　21.近火告ぐメールの中の慌てぶり
　　22.空白の日の多かりし古日記
　　23.繰り言は子のことばかり温め酒
　　27.さてとこそ討入りの日の煤払ひ
　　28.サポーターの勝ち歌奔るサッカー場
　　30.地蔵堂拭く女たち着ぶくれて
　　31.除夜の鐘昼に打つとは世も末に
　　32.煤逃げの頭刈られてをりにけり
　　34.煤逃やガラケーわざと置き忘れ
　　35.雀どち流行風邪など貰ふなよ
　　36.澄み切った冬夕焼けの筑波山
　　38.底冷える今夜は湯豆腐越後酒
　　39.宝物溢れて軽し熊手かな
　　41.束の間の冬晴れの富士賜りて
　　42.テレビより雅楽の調べ屠蘇祝ふ
　　43.電飾の煌めく聖夜人の波
　　47.睨み鯛予約をすませ年用意
　　49.初詣大吉狙ひみくじ引く
　　50.肥後の夜も具と味変えて寄せ鍋で
　　51.日頃謝し年一度の初参り
　　52.ビル街の聖夜の光忌ま忌まし
　　53.富士仰ぎ枯草なれど貯蔵力
　　55.冬ごもり女人源氏の虜なる
　　60.故里の味たつぷりと雑煮かな
　　61.ぼろ市や古着杵臼招き猫
　　63.水鳥の潜水二十五秒間
　　66.焼芋を双子の姉妹分けあって
　　67.行く年や健やかなるを感謝して
　　70.湯豆腐や長押にかかる木挽鋸
　　71.寄せ鍋や一人張りきる鍋奉行

評点につきまして間違いがありましたら、お早めにお申し出ください。

選者（敬称略）

泥 舟　TOTORO　Tiger6　麦 秋　利 明　雪 子　俊 雪　苦 瓜　panapana　山椒の実　夢追人　secchan　しょうく　さんせん　昇 峰