【火取虫】
撲ちすゑし蛾のおののきの止みたる眼　　 富安風生
うらがへし又うらがへし大蛾掃く 　　　　前田普羅
うとうとと眠りては覚むひとりむし 　　　久保田万太郎
酌婦来る灯取虫より汚きが 　　　　　　　高浜虚子
金粉をこぼして火蛾やすさまじき 　　　　松本たかし
大き蛾がゑひどれのごとく先ゆけり 　　　川島彷徨子
灯虫さへすでに夜更のひそけさに 　　　　中村汀女
吾が胸に悪魔棲みをり火取虫 　　　　　　鈴木真砂女
火取虫翅音重きは落ちやすし 　　　　　　加藤楸邨
飛びこみし蛾の燃えランプ明るうす 　　　福田蓼汀
幽冥へ落つる音あり灯取虫 　　　　　　　飯田蛇笏
山の湯に影を大きく火取虫　　　　　　　 伊藤伊那男

明日の兼題は、「黒南風」です。