もし食べられなくなったら? 栄養剤の基礎知識
「もう満足に食べ物を噛めなくなってしまったら、一体どうなってしまうのだろう」
年齢と共に顎の力が衰えてしまう、病気を患いまともに食事を摂ることができなくなってししまうなど、加齢や病気によって食べられないリスクが高まってしまう。
食とは人生においてとても大切なことであり、それを楽しみとして生活している人も非常に多くいることでしょう。

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万が一何かしらの理由により、その食事を摂ることができなくなってしまったら一体どうなってしまうのでしょうか?
現代の医療では食事が摂れないからといって栄養不足で死んでしまうようなことはありません。
経腸栄養という方法で食事を摂れなくなってしまった人でも栄養を摂取し、生きていくことができるのです。
ここでは、胃ろう手術などの「食べることができなくなった後の人生」について考えていきたいと思います。
高齢者に胃ろうするのは日本だけ?
皆さんは「胃ろう」という言葉を知っていますか?
なんとなく聞いたことがある人も多いと思いますが、実際にどのようなものなのかまで把握している人は少ないのではないでしょうか。
「胃ろう」は病気により治療をしても口からの食事ができない状態になってしまった患者の方へ施される手術です。
そして多くが手術を早急に決断しなければ1〜2週間ほどで亡くなってしまうほど決断を急がされます。
重要な決断が必要になる胃ろうとは一体どのようなものなのでしょうか?
胃ろうは皮膚と胃の間に人工的に穴を作り、そこにチューブを通す処置を施す手術のこと。
もともとこの手術は高齢者向けのものではなく、1979年にアメリカで小児患者用に開発された技術だそう。
しかし、現在の日本では高齢者向けに使用されることが多く、平成28年の時点では高齢者の130人にひとりが胃ろうを使用しているほどだとか。
この胃ろう手術を施せば、口から食事が摂れなくても、栄養を摂取することができますので、病気を患ってしまっても昔に比べ長く生きることが可能になりました。
しかし、長く生きられるとはいえ、その実態は寝たきりの状態がほとんどで、介護をする家族への負担が非常に大きいという面も否定できません。
胃ろうに関しては海外と日本でも考え方に大きな差があります。
実は海外では高齢者に対して胃ろう手術を施すことはほとんどないそうです。
一体なぜなのか? というと、海外では高齢や病気により終末期を迎えたとき、食事を摂れなくなることは自然なことで、無理に延命を図ることは非倫理的だという考え方があるのです。
むしろ虐待であるという考え方すらあり、食事を摂れなくなった人に胃ろうをつけてまで延命させているのは、世界でも日本人くらいのようです。
ドリンクタイプの栄養剤

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胃ろうを付けるほどの重篤な状態ではなくても、食事を摂ることが難しい患者もいます。
固形の食事を摂取するのが難しい患者の方へ利用されているのが「経腸栄養剤」です。
経腸栄養剤はタンパク質やビタミン、糖質などの身体に必要な栄養素を経腸的に投与する方法。
栄養素を投与する際は「経口法」と「経管栄養法」の2種類があり、使用する栄養剤は患者の腸管の機能、消化・吸収能力などに十分に気をつけて選ばれます。
経口法により栄養剤を摂取できる場合に使用される栄養剤は機能の回復に合わせて半消化状態や流動食、ミキサー食などがあり、本来の食事により近いものを使用。
味の種類も豊富にありバニラ味やコーヒー味、ストロベリー味の王道な味のほか、メロン味や黒糖味の栄養剤まであるのです。
現在、日本で多く使用されているのはアボット(http://www.abbott.co.jp/)が販売する「エンシュアリキッド」という商品。
エンシュアは「処方箋医薬品以外の医薬品」という扱いになっているため、基本的には医師の処方によって入手することができます。
このエンシュアは、液体タイプの経腸栄養剤の先駆け製品で、病態時における主要栄養素およびビタミン・ミネラルの効率的でバランスの良い摂取を目的として開発されました。
今ではエンシュアだけで生きながらえている、という人も非常に多いのです。
エンシュアが優れている点は、栄養を効率的に摂取できるため誤嚥を起こしにくいだけでなく、豊富な味にあります。
エンシュアリキッドは「バニラ味」「コーヒー味」「ストロベリー味」と3種類の味があり、エンシュア・Hは「バニラ味」「コーヒー味」「黒糖味」「バナナ味」「メロン味」「ストロベリー味」と6種類も味があるのです。
栄養がたっぷりと入っているのに少量であるため、強烈な甘さを感じることがあり、苦手な人はとことん苦手ですが、甘いものが好きな人にとっては何杯でも飲みたくなる経腸栄養剤なのだとか。
噛む力が弱くなったり、嚥下する力が衰えたりした高齢者に対して多く処方されるエンシュア。
しっかりとした食事ができなくなっている人を、延命できるというメリットがある反面、本来であれば寿命で亡くなるはずの人を無理に生きさせているという倫理的なデメリットもあります。
家族や自分自身はもっと長生きしたい、と思うかもしれません。
しかし、増え続ける医療費は、70歳以上2割負担、75歳以上1割負担という制度をも壊してしまう可能性があります。
人が老いて食事がとれなくなるのは自然なことです。
自分自身のあり方を考えておく必要があるかもしれません。
自分らしい最期を考える

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胃ろうを導入するかどうかは、最終的には家族の意志により決められます。
老衰などの理由により口からの食事ができなくなってしまった患者に対し、家族の方は「胃ろうをやらない」という選択をするケースは少なくはないそうです。
胃ろうを行わなかった場合は、栄養を摂取するための経口摂取ができないため、そう長くは生きることはできません。
しかし、胃ろうによう延命ではなく、生物として「自然死」という当たり前の死に方ができるのです。
もちろん胃ろうによる延命を否定するつもりもありません。
残させる家族にとっても、本人にとっても少しでも長く一緒にいられる方法なのですから。
人生の終わりはどんな人にも必ず平等に訪れるものです。
自分の最期はどうありたいのか、家族と一緒に話し合っておくことも重要かもしれません。
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