「老人性うつ病」は認知症に間違えられやすい!「老人性うつ病」は周囲の人の注意深い症状の観察が大事
「うつ病」と聞くと、どのような症状を浮かべますか?
精神的に落ち込み、気分が晴れず、部屋に引きこもりになる、何もやる気がしない、ただただ一日をぼーっと過ごすなどのマイナスイメージが多いですよね。
うつ病のなかには、年齢を重ねた人ほど患いやすい老人性うつがあります。
老人性うつは、通常のうつ病とは異なり、自分も、他人も気がつきにくいという特徴が。
今回は老人性うつについて詳しくご紹介します。
老人性うつ病とは?患う人の割合は?認知症ではないの?一般のうつ病と違う点は?

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少子高齢化が年々進行し、高齢者特有の病気が新たに発見されるケースも増えてきています。
「老人性うつ病」はそのひとつで、うつ病は子どもから老人まで多くの人が発症する可能性のある病気。
しかし、高齢者のうつ病は素人目には認知症との区別がつきにくく、認知症と間違われ、周囲の人が正しい対応をしなければどんどん症状が進行してしまう、という危険性をはらんでいます。
そのため、多くの人が老人性うつ病に対して正しい知識を持って、早い段階で適切な対応を行う必要があるのです。
一般のうつ病との相違点。認知症とは異なる
若い人でも患ううつ病と老人性うつ病が異なる点はどこにあるのでしょうか?
老人性うつ病は正式な病名ではありません。
65歳以上の人が患ううつ病のことを老人性うつ病と呼んでいます。
老人性うつ病は多くのうつ病患者に見られる「日がな一日ぼーっと過ごす」「元気がない」といった症状が認知症の初期症状と似ている点が厄介なポイント。
認知症と誤った判断をされ、適切な処置が行われないことで症状がどんどん進行してしまうのです。
うつ病は基本的に早期に正しい治療を行えば治る病気です。
しかし、認知症と見分けがつきにくいことから、周囲も、そして本人も知らぬ間に進行し、悪化する危険性をはらんでいます。
「なんか様子がおかしい」と周囲の人が感じたら、安易に認知症と結びつけずに、老人性うつ病の可能性もあることを知っておくことが大切です。
認知症との違いは「症状の進行速度」「記憶障害の有無」「自責の念の有無」「本人の自覚の有無」「質問に対しての受け答え」。
認知症は徐々に進行する病気です。
そのため、発病に気がつかないケースも多いのですが、老人性うつ病の場合は比較的短い時間で複数の症状が現れるため、周囲の人が異変に気がつきやすいのです。
このほか、記憶障害は認知症・うつ病両方に見られる症状ですが、認知症の場合は軽度→重度という変化をするのに対して、老人性うつ病の場合はある日突然、数日前のことが思い出せなくなって本人の不安感が強くなるという特徴があります。
また、抑うつ気分が強いという特徴もあります。
自分の症状のせいで周囲の人に迷惑をかけている、という自責の念が強くなるという特徴があります。
物事に対して急に悲観的になったり、自分を卑下する発言が増えたら要注意。
このほか、老人性うつ病患者は自分の認知機能低下をハッキリと自覚しています。
また、質問に対しての受け答えも、老人性うつ病の場合は熟考した上で答えが出ない、という特徴があります。
老人性うつ病を患う人の割合
厚生労働省が2008年に発表した「男女年齢別患者数」によると、60代・70代の女性のうつ病患者数はいずれも10万人を超えており、35万人以上が患っているそう。
30代・40代の患者数が37万人ということを考えると、かなり多いことがわかりますね。
近しい人がうつ病っぽいときはどのように対応したらいいの?悪化はしない?回復させるには?治らない?病院は何科?薬で治る?老人性うつ病との関わり方

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病院を受診するなら
老人性うつ病を患った人は「頭痛」「めまい」「肩こり」「食欲不振」「吐き気」「耳鳴り」「しびれ」といった身体的な不具合を頻繁に訴えてくるようになります。
そのため、通院する際は内科や外科を回ることになるでしょう。
ところが検査をいくら受けても異常は見当たりません。
直接的な原因がわからず、頭を抱える家族も多いそうです。
「頭痛」「めまい」などの症状のほか、「不安感、焦燥感を訴える」「落ち着きがなくなる」「突然趣味に興味をなくす」「外出しなくなる」といった症状も見られるケースが多いよう。
これらの症状が出ていた場合、老人性うつ病を疑ってみてください。
そのまま放置していると病状はどんどん進行していき、自殺に至るケースもあります。
早期に正しい科を受診して、医師による治療を受ける必要があります。
通院する場合は精神科や心療内科を受診しましょう。
ここでうつ病だと診断された場合には「精神療法」「薬物療法」「環境調整」のいずれか、あるいは3つすべての治療が行われます。
「精神療法」は名前の通り、病院に通って医師や看護師と対話を繰り返し、状態の改善をはかる治療です。
医師や看護師に構ってもらえることで、孤独感を解消できます。
孤独感を解消することで、うつの寛解を目指すのです。
「薬物療法」は投薬による治療です。
抗うつ剤などを使用し、治療を行います。
しかし、老人性うつ病の場合、抗うつ剤の使用が難しい場合もあります。
抗うつ剤は血圧を上げたり、尿が出にくくなったり、頻脈が生じるといった副作用が出る可能性があったり、緑内障患者には使用できないものもあるためです。
三つ目が「環境調整」です。
現在の環境を変え、くつろげる環境をつくってあげるなどして、本人が安心して暮らせる環境を作ることも効果的だとされています。
老人性うつ病の原因のひとつに孤独感があります。
孤独感を解消できるよう、ひとり暮らしの老人には家族と同居し、話し相手がいる環境を作ってあげると改善することもあるそうです。
このほか、運動なども効果的。
身体を動かすと体力もつきますし、気力も維持できます。
うつになると休養することが適切だと考えられがちですが、老人性うつ病の場合は活動することが寛解の近道だったりします。
外に連れ出したり、地域の活動への参加を勧めるなど「ひとりでいる時間を減らす」ことも重要なポイントです。
老人性うつ病との関わり方
家族が老人性うつ病患者と関わる場合、「つらいね」「大変だね」と同意してあげるのが重要。
共感を得られると不安感が薄れ、症状が改善することが多いそうです。
「気のせいだ」「頑張れ」という言葉を禁物。
却って悲観的になって、病態が悪化する可能性があります。
本人の性格によって対応の仕方は異なるので、医師に相談するのが良いでしょう。
老人性うつ病を予防するためには?

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「孤独感の解消」「健康な心身」が老人性うつ病予防において重要なポイントです。
うつ病はセロトニンという精神を安定させる神経伝達物質と関係が深いと言われています。
セロトニンは太陽を浴びたり、運動することで分泌されるので、屋外でのウォーキングなどの運動が良いでしょう。
強度の高い運動を行う必要はありません。
ゆっくりと屋外を散歩するだけでも効果的です。
また、定年退職後は社会とのつながりも薄くなりがち。
だからこそ社会とのつながりを盛っておきましょう。
家に引きこもりにならないよう、近所で催されているサークルに参加したり、友人を作って趣味をはじめてみることで新たな生きがいが生まれるかも知れません。
このほか、炭水化物中心の食事ではなく、ビタミン、ミネラルをしっかりと補給するようにしましょう。
自分で用意できない場合は宅食サービスなども有効です。
老人性うつ病は認知症と勘違いされがち。
しかし、原因も症状も異なります。
正しい知識を持って、老人性うつ病の早期発見と予防を行いましょう。
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