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ネット上の他人の記事を「コピペ」して自分のブログで紹介するとどんな罪に?

読売新聞のウェブサイトに掲載されたコラム記事が、インターネット掲示板「2ちゃんねる」に、そのままコピーされ転載され、物議を醸しました。さらに2ちゃんねるに全文転載した人物が、自身のツイッター上で、

「Webに公開された情報は利用者全員の共有資産であるので、コピペしても構わないはず」
「著作権を主張するなら、パスワードかけて会員限定記事にしてください」

などと、発言。一時、インターネット上で炎上する騒ぎとなりました。
この人物が発言したように、インタネーネット上で公開されているものは、自由に使っていいのではと思っている人も多いと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか?

元コンテンツの「著作物性」が問題に

パソコン

画像提供:imagenavi(イメージナビ

今回、争点となっているのは、コピペした記事が元のコラム記事の著作権を侵害しているかということです。

著作権侵害の問題となる場合には、前提として、元のコンテンツが「著作物」といえるかを検討する必要があります。そもそも、「著作物」といえなければ、それをコピペしても問題にはなりません。
著作物とは、法律上、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(法2条1項1号)とされています。簡単にいうと、著作物といえるためには、創作性、つまりオリジナリティがあることが必要です。

このオリジナリティは、特別な人しか生み出せないといったものである必要はなく、その人自身のオリジナリティが表現されていればよいとされています。今回の元のコラム記事は、映画の評論記事でしたのでオリジナリティがあるといえ、「著作物」に当たります。

著作物は他人が無断で使用することはできない

では、今回コピペをした方が主張している「Webに公開された情報は利用者全員の共有資産」という主張は、法的に正しいのでしょうか?

著作権法では、著作物については、著作権者の許可なくコピーすることができないとされています。これは、インターネット上に公開されていても同じことです。よって、今回のケースでは、元のコラム記事を執筆した人が「コピペOKですよ」と言わない限り、勝手に使用してはいけません。

インターネット上で公開していることと、それを使用していいかどうかは、全く別問題なのです。

「引用」の場合は許される

著作権者の許可がなくても、コンテンツの利用が例外的に許される場合があります。それが、著作権法上の「引用」(著作権法32条1項)の場合です。

どういった場合に「引用」といえるかについては、著作権法上の規定はありません。しかし判例上では、明瞭区分性と主従関係の2点が判断基準になっています。明瞭区分性とは、自分のコンテンツと他人の著作物を明確に区別するということです。

例えば「他人の著作物部分をきちんとカッコで括る」「出典を明らかにする」といったこと。自分のコンテンツと他者のコンテンツを、一般の読者の人に、分かりやすく伝える必要があります。
主従関係とは、自分のコンテンツと他人の著作物との間で、「質」と「量」ともに、自分のコンテンツが「主」、他人の著作物が「従」という関係にあることが必要です。

これについては、どの程度の分量であれば許されるのか、といった明確な基準はありません。ただ、量的なことでいえば、他人の著作物の引用が全体の半分以上であると、主従関係の要件を満たさない可能性が高くなります。
また最近の判例では、上記2点のポイントのほかに、引用に当たるかの考慮要素として、下記の5項目が総合考慮されなければならないと判示しました(知財高裁平成22年10月13日判決)

(a)利用の目的
(b)方法
(c)態様
(d)利用される著作物の種類や性質
(e)利用される著作物の著作権者におよぼす影響の有無・程度

このように、著作権法上の「引用」に当たるかは、より複雑な判断が求められています。

コンテンツを扱う事業者は慎重な判断を

ここまでで解説したように、インターネット上で公開されている情報を全文コピペすることは、著作権法上はアウトです。安易な判断で、他人のコンテンツを使用することは避けるようにしましょう。

*著者:弁護士 中野 秀俊(グローウィル国際法律事務所。弁護士になる前、システム開発・インターネット輸入事業を起業・経営。IT・経営・法律に熟知していることから、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動している。ブログ「IT・インターネット法律ブログ」)

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