糖質制限のキーワード「ケトン体」が脳に良い理由
血糖値が下がると体内の脂肪から生成されるケトン体は、糖質制限ダイエットの新しいキーワードとして話題です。ブドウ糖の代わりに脳のエネルギーとなり、認知症予防や健康に良い効果が期待されています。
脳の第2のエネルギー
●脂肪を分解して作られる
ケトン体とは、身体の余分な脂肪や食べ物の脂肪を分解して肝臓で作られる物質で、脳や体を動かすエネルギーのひとつ。
食品の栄養では脂質、たんぱく質、糖質の3大栄養素だけが体内でエネルギー源となり、脳に入ることのできる成分は唯一、糖質を分解してできるブドウ糖だと考えられてきましたが、このケトン体が第2のエネルギーになることがわかってきました。
体内でブドウ糖が不足する(血糖値が下がる)と、肝臓に蓄えられた中性脂肪からケトン体が作られます。これは人類が農耕を始める前、動物の肉や木の実の栄養を体内に蓄えて生命を維持していた頃から備えているメカニズム。ただ、私たち現代人の体は、パンやごはん、甘いお菓子など、糖質の豊富な食生活にあるため、ケトン体の利用を休止している状態です。ケトン体を作り出せる体質になるためには、糖質制限が必要だといわれています。
●ココナツオイルの力
一方、体によいと注目されているココナツオイルの主な成分は、中鎖脂肪酸という脂肪。中鎖脂肪酸は一般的なオイルの長鎖脂肪酸にくらべて分子が小さいため分解されやすく、約5倍の速さでエネルギーとなり、体に蓄積しにくいことに加え、約10倍のケトン体を生成します。個人差はありますが、ココナツオイルを取ればケトン体を補充することもできるのです。
認知症の予防・改善に効果
●細胞を活性化
アメリカの医師がココナツオイルで認知症を患う夫の病状が改善したと発表し、世界的に脚光を浴びました。ココナツオイルを取ることで供給されたケトン体が、ブドウ糖に代わって脳のエネルギー不足を解消し、細胞を再び活性化させたと考えられます。また、日本の順天堂大学が行った研究では、健康な脳でも血液中のケトン体濃度が上がれば認知機能が高まることがわかりました。
●脳以外へのメリット
エネルギー源をブドウ糖からケトン体に変えることは、脳以外にもメリットがあるといわれています。血糖値や中性脂肪、コレステロール値が下がり、血液がサラサラになって動脈硬化を予防。また、空腹時のイライラがなくなる、体内の中性脂肪が燃焼して肥満を解消する、健康寿命を延ばすなどです。
ココナツオイルによるケトン食
●糖質を控える
ケトン体を体内で効率よく生成させるために考えられた食事療法はケトン食といい、低糖質・高たんぱく・高脂質で構成されます。持病がある場合は、医師に相談の上で行ってください。
まずは、ご飯やパン、麺類、甘いお菓子などの糖質をできるだけ控えましょう。1食あたり糖質20〜40gが理想的。そして、ココナツオイルを1回大さじ1杯程度、1日3回取ります。このとき、パンに塗って食べ過ぎると糖質過多になってしまうおそれがあるので注意しましょう。おすすめなのは、ブラックコーヒーや紅茶に混ぜて飲む方法です。朝食代わりに飲むだけで脳が目覚め、3時間後にはケトン体の血中濃度がピークになります。8時間後には消滅するため、昼食や夕食の数時間前にココナツオイルを摂るとエネルギー補充ができ、同時に食欲も抑えられます。
糖質を制限すると筋肉量が落ちてしまうことがあるため、たんぱく質をしっかり補いましょう。男性で1日あたり60g、女性で50g以上が目安です。野菜は根菜、いも類など糖質が多いものより、食物繊維たっぷりの葉野菜やきのこ、海藻を中心にするとよいでしょう。
食べる順にもポイントがあり、最初に野菜、次に肉や魚、最後に主食が基本です。ゆっくりとよく噛んで食べ、急激に血糖値を上げないことで体に負担をかけず、ケトン体の働きもよくなります。
さらに、1日30〜40 分歩くなどの適度な有酸素運動やストレッチ、十分な睡眠、ストレス解消といった生活習慣を身につければ、認知症予防に効果が期待できるでしょう。
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