【薬を飲む最適時間】話題の『時間治療』で効果や副作用が変わる
薬を飲む時に意識する時間といえば「食後・食前・食間」や「8時間空ける」などですよね。しかし『時間治療』とはこれらのことを指す言葉ではありません。効果が最大になるように時間を測って薬を飲む『時間治療』を取り入れることでリウマチや生活習慣病など多くの病気に効果を発揮していると、NHK「あさイチ」や「クローズアップ現代」で紹介され話題になっています。

画像提供:imagenavi(イメージナビ)
真夜中の抗がん剤治療!? 最新医学事情
この時間治療。今までの投薬治療と何が異なるのでしょうか? 北里大学薬学部教授の吉山友二さんは、「人間の体には生体リズムがあり、同じ薬で同じ量を投与しても、効果が大きい時間とそれほどでもない時間が存在します。その生体リズムや病気の特性に合わせた投薬をすることで、効果も高く副作用も軽減できるのが時間治療です」と話します。
先に紹介した肝臓にガンが転移した例では、通常昼間に投与する抗がん剤を、夜中、寝ている愛大に投与したことで劇的な効果をあげた、ということなのです。仕組みは、正常な肝臓の細胞には抗がん剤を分解する作用があるそう。この働きは昼に低く、夜中に最も作用が高まることが発見されたことがきっかけ。夜中に抗がん剤を投与することで、正常な細胞が抗がん剤の影響を受けにくくなり、副作用が軽減されるというのです。
ガンだけではなく、正常な細胞も攻撃してしまう抗がん剤のデメリットを解消できるこの方法。果たして効果があるのはがん治療だけなのでしょうか?
ガン以外にも効果があり! その秘密は「生体リズム」
ガン以外にもさまざまな効果が確認されつつある時間治療。その理由は人間の「生体リズム」。
人間の脳内にある視交叉上核という部分が、体内時計を司っていることはすでにわかっていること。朝、太陽の光刺激が入ると、視交叉上核にある「中枢時計」が刺激を受け、朝だと認識できます。この時に体内時計がリセットされるというわけです。
生体リズムを作るためには、この仕組みは非常に重要で中枢時計は体中の臓器にある「末梢時計」に司令を与えていきます。この司令によって、体全体が「朝だ」と認識できるのです。
こうした複雑な動きが合わさり、生体リズムを作り上げていっています。夜が明ければ、日常生活を活発に行うために生命身体機能である心拍数や血圧は徐々に上昇。成長ホルモンの生産量は真夜中の3時頃、胃酸の分泌量は20時頃最大になるなど、身体の機能の高低も一日の中でリズムがあることがわかりました。このリズムは、心筋梗塞は午前中が最も多いということにもつながります。目覚めて血圧が上昇することや地が固まりやすい時間が関係していると考えられています。
生体リズムをしっかりと知ることで、自分の体が今何を行っているのかが明確になります。
どんな症状が改善した例がある? リウマチ? ダイエット?
生体リズムを読み解くと、アトピー性皮膚炎の炎症は夜中に起きやすく、脳出血は7時と17時に発症しやすいと行った傾向がある。リウマチも解き明かされてきて、リウマチの原因物質と言われている炎症性サイトカインは午前3時ころが発生のピーク。そのため、症状が重くなる明け方に薬の効果が最大になるように飲むことで、関節のこわばりや痛みがより改善できるそう。
時間治療は高血圧にも効果が。高血圧の時間治療には24時間の血圧変動を把握する必要があります。
ポイントは夜間の血圧が昼間に比べてどのくらい低下するのか。夜間にも血圧があまり下がらない場合、動脈硬化が進行しやすくなります。こうした症状を改善するには朝と昼に飲む降圧剤を、寝る前にも飲むようにすると行った対策が考えられます。
このほか、脂肪細胞の増加や脂肪の蓄積に関わる細胞の活動時間に合わせて、脂肪をつきにくくする食事の取り方もできるそうです。番組では「午前10時30分ごろがもっとも脂肪がつきにくいと考えられる」と紹介されていました。
ただし、この「時間治療」はあくまで専門医の指導のもと実施するものです。効果があることがわかってきてはいますが、自分の判断で行うのはやめましょう。まずは自分の生活リズムをしっかりと整えることが、健康への近道だといえそうです。
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