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日本から世界へ 和紙の魅力

和紙は優美さと耐久性を併せ持ち、文字や絵を書く以外にも、ふすまや障子などの生活用品、インテリアにも幅広く利用されてきました。昨年秋「ユネスコ無形文化遺産」に登録され、その魅力は世界中に広がっています。

洋紙は100年、和紙は1000年

明治以降、西洋から伝わった「洋紙」に対し、日本の伝統的な製法で作る紙を「和紙」と呼びます。どちらも、植物の繊維を使って作ります
が、洋紙は広葉樹や針葉樹の木の皮を除去した幹の部分(木質繊維)を主原料とし、和紙は楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物の表皮の内側の繊維を主原料としています。
洋紙は木質繊維をすりつぶして粉末にし、薬品を使って大量生産されます。和紙は、繊維を残し、粘剤(ネリ)を混ぜ、日本独自の紙漉(す)き技法で一枚一枚作られます。太く長い繊維をからませて仕上げるので、強度、保存性、耐久性が高く、独特の風合いをそなえています。
洋紙の保存が100年といわれるのに対し、和紙には1000年を超える保存実績があります。年代の分かる日本最古の和紙は、正倉院に伝わる大宝2(702)年の日付が記された戸籍用紙です。

文化財の修復に高い評価

古くから和紙は、字を書く用紙以外にも、生活文化の素材として広く用いられてきました。薄くて破れにくいという特性を生かし、障子、ふすま、雨がさ、ちょうちん、あんどん、食器などさまざまに加工され、日本人の日常生活を支えてきました。そして現代では、国内だけでなく世界中で、美術品や文化財の補修に和紙が使われています。
1966年にイタリアのフィレンツェで洪水が起き、書物に大きな被害が出た際に、修復材として日本の和紙が贈られ高く評価されました。パリのルーヴル美術館、バチカン宮殿の大壁画修復の際にも、傷んだ部分の補強材として和紙が用いられ、成果をあげています。

ユネスコ無形文化遺産に登録

建物など有形の文化財保護と継承を目的とする「世界遺産」に対し、民族の文化財、風習、口承伝統など無形のものを対象としているのが「ユネスコ無形文化遺産」です。
昨年秋、2009年に登録された「石州半紙」に追加されるかたちで、「本美濃紙」、「細川紙」が「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。
この3つの和紙は、いずれも楮を原料とし、「流し漉き」と呼ばれる伝統の技法で紙を作る点が共通しています。

石州半紙(島根県浜田市)

【用途】表装の下張り紙、障子紙、文化財修復紙、書画用紙など和紙の中でも強く、数回から数十回折り曲げるとちぎれる洋紙とくらべ、石州半紙は、縦方向で3405回、横方向で660回まで耐えたという文化庁の記録があります。かつては大阪商人が帳簿に用い、火災のときは井戸に投げ込んで保存をはかったとされています。

本美濃紙(岐阜県美濃市)

【用途】障子紙、記録用紙、書画用紙など日光に晒されると白さが増していき、通風性、保温性にもすぐれているので、湿度の高い日本の風土に合った素材です。光を明るく通し、陽光に透かすと繊維が整然と広がり、障子紙の最高級品と称されます。

細川紙(埼玉県小川町、東秩父村)

【用途】表具用紙、型紙原紙、古文書修復用紙、版画用紙など江戸時代、紀州(現在の和歌山県)の細川村で漉かれていた「細川奉書(ほうしょ)」の技術が江戸に近いこの地に伝わり、その需要に応えるようにして発展しました。表面が毛羽立ちにくく丈夫な特性を生かし、本ふすまの裏張りや屏風の紙蝶番(かみちょうつがい)など見えない部分で力を発揮します。

和紙をもっと知るには

「紙の博物館」(東京都)

昭和25(1950)年、日本の洋紙発祥の地である東京・王子に設立された世界有数の紙専門博物館。紙に関する古今東西の資料が展示されている。日本の和紙の歴史や製造工程、世界の手漉き紙も紹介。

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