上げたり下げたり、生命保険料はどうやって決まる?
「4月から生命保険料値上げ」という記事を目にしたと思ったら、今度は「長寿化受け11年ぶりに死亡保険料下げ」とのニュース。上げたり下げたり、生命保険の保険料っていったいどうやって決まるんだ! と疑問をもつ人も多いに違いない。
生命保険の値段のカラクリを理解するキーワードは「2つの保険料」と「3つの予定率」だ。
その保険料でいいの?
テレビCMが多いと保険料は割高
2つの保険料とは「純保険料」と「付加保険料」をいう。
「純保険料」は、純粋に保険契約者のために使う(支払う)予定の保険料だ。具体的には死亡保険金、入院給付金、満期金、年金などの支払いにあてるお金で、保険会社によってあまり差がない。
「付加保険料」は、保険会社が存続するために使う予定の保険料。具体的には人件費や広告宣伝費など、経費の支払いにあてるお金で、保険会社によって大きな差がある。
一方、3つの予定率とは、「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」をいう。
「予定死亡率」は、ある年齢の人が一定期間に死亡する割合のこと。
たとえば、20歳男性10人のグループと70歳男性10人のグループの予定死亡率は、70歳のほうが高い。当然、保険会社が70歳グループに支払うお金は多くなる。そのため、予定死亡率が高いほうが純保険料は高くなる。
「予定利率」は、簡単にいえば「割引率」のこと。
たとえば、ある保険の保険料が4800円だとする。保険会社は契約者から受け取った保険料を運用する。株に投資したり、所有ビルを他の会社に貸して賃料を得たりする。そのぶん本来5000円の保険料を4800円に割り引くのだ。
運用成果が大きくなりそうなときは、割引率すなわち「予定利率」も高くなる。そのため、「予定利率」が高いほうが「純保険料」は安くなる。
また、「予定事業費率」は、保険会社を経営していくうえで必要なコストの割合をいう。
同じ保険料を支払っても、従業員の給料が高かったり、テレビCMが多かったりすると、保険料のうち、コストが占める割合は高くなる。そのため、「予定事業費率」が高いほうが付加保険料も高く、契約者にとっては割高な保険となる。
貯蓄型保険は2018年4月まで待つ?
保険会社はさまざまな指標やデータをもとに収支を計算し、保険商品を設計している。指標やデータは一定期間で変更が行なわれるため、それに応じて商品の内容や保険料も見直される。
2017年4月から値上げされたのは、月払いの個人年金保険や学資保険など貯蓄型保険の保険料だが、これは日本銀行のマイナス金利政策の影響で市場金利が下がり、「予定利率」のもととなる「標準利率」が1.00%から0.25%に引き下げられたため。標準利率は金融庁が定め、これをもとに各生保会社が「予定利率」を決める。
2018年4月から値下げされるのは、定期保険や終身保険など死亡保険の保険料。平均寿命の延びを反映して公益社団法人日本アクチュアリー会が作成している「生保標準生命表」が2007年以来11年ぶりに改定され、予定死亡率のもととなる「標準死亡率」が下がるためだ。
ちなみに、標準死亡率が下がると、長生きがコストアップとなる医療保険は値上げされる可能性がある。
つまり、貯蓄性の高い保険は、2017年に一度値上がりして2018年に値下げされるかもしれない。特別の事情がないのであれば、2018年4月まで加入を見合わせたほうがよさそうだ。(阿吽堂)
阿吽堂(あうんどう)
マネー誌編集者・ジャーナリスト。「マネージャパン」編集長、「マネープラス」の編集部長などを歴任。現在は雑誌・書籍・ムックなどを幅広く手がけるベテラン。
提供元:J-CAST会社ウォッチ
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