これって認知症?意外と知られていない「ピック病」って一体どんな病気?症状は?治るの?
人間らしさが奪われるともいわれるピック病。
ある日いきなり変な行動をしたり、わけのわからないことを言うなど、認知症の初期のような症状で現れるのが特徴。
ピック病は前頭側頭型認知症のひとつで日本国内には1万人以上の患者がいると推定されています。
40代から60代と比較的若い世代が発症しやすいといわれており、アルツハイマー型認知症、うつ病、統合失調症などほかの精神疾患と誤診されることも少なくないのだとか。
本日はピック病についてご紹介します。
ピック病と認知症との違い。介護施設ではどのような対応をしている?
「突然怒り出すようになった」「女性のお尻や胸に触れるような痴漢行為をするようになった」「万引きをするようになった」。
こうした今までと違う行動を、ある日を境に急に取り始めた人が身近にいる、という方もなかにはいるのでしょうか。
こうした症状はもしかするとピック病の一種かもしれません。
ピック病は認知症の一種ですが、患者数が多いアルツハイマー型認知症などとは勝手が違うという特徴委があります。
ピック病はその人の人格までも変えてしまうのです。
ピック病は若年性アルツハイマー型認知症と同様に40代から60代の人に発症しやすい「初老期認知症」の代表的な疾患。
現在日本には1万人以上のピック病患者がいると推定されており、アルツハイマー型認知症や統合失調症などと誤診されることも少なくありません。
本人は病気である、という認識がないため、ピック病患者は周りの人が気づいてあげなければなりません。
前頭葉と側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」のひとつで、ピック球という脳の神経細胞の塊が前頭葉と側頭葉にできることで生じる認知症です。
人間らしさを奪う病気とも言われ、理性的な行動を取れなくなったり、感情をコントロールできなくなったり、意思が欠如してしまったり、運動性言語障害、判断力低下、記憶力低下などの症状が現れてきます。
こうした症状によって万引き、窃盗、怒り、暴力、社会的ルールを守れない、痴漢行為、同じことを繰り返す、衛生観念の欠如、無気力、生活能力の低下、暴食、拒食、人のモノマネをするようになる、周回・徘徊といった行動を起こします。
施設での対応
一般的な認知症と異なり、ある程度の専門知識を持った上で接しなければなりません。
介護施設ではどのような対応をしているのでしょうか?
一般的に高齢な人よりも、初老期に発生することが多いため、高齢者と比較すると力も強く、徘徊といった行動も活発なため、ケアは難しいと言われています。
グループホームなどを運営する「きのこグループ(https://www.kinoko-group.jp/)」ではピック病患者だけが集まるホームを運営。
職員も専門知識を有し、適切なサポートを行っています。
ピック病を理解する職員がおり、ごくごく普通の生活を送れるのです。
病気を治すのではなく、「生活を続ける」という環境を提供してくれています。
このようにピック病の場合、通常のホームでは断られる可能性が高いでしょう。
専用のホーム、病院なども増えてきているので、もしも身近な人がピック病を発症したら、こうした施設があることを覚えておきましょう。
情緒障害、人格障害、自制力低下、異常行動などピック病の症状とは?脳波は認知機能障害に比して末期まで正常なことが多い
前頭側頭型認知症のうち、行動障害型は喜怒哀楽の感情が乏しくなって無気力状態に。
世の中で起きているすべての出来事に関心が持てず、次第に自分の身の周りのことにも興味をなくしていきます。
自分の身の回りにも興味をなくすと入浴しなくなったり、着替えを拒否したりと清潔への拒否感を示すことも。
また、行動障害型は自制できなくなったり、無遠慮になるという行動を取る人もいます。
犯罪行為を行ったりするのも行動障害型の特徴です。
もうひとつは言語障害型で、これは意味型、失文法/非流暢性型、言語減少型の3タイプがあります。
意味型は言葉の意味がわからなくなるタイプ。
話しかけても言葉の意味が理解できず、簡単な言葉であっても聞き返したりします。
失文法/非流暢性型はうまく言葉が組み立てられず、つっかえつっかえでしゃべってしまう症状。
発音もうまくできなくなり、滑舌が極端に悪くなったようなしゃべり方になります。
言語減少型は短期記憶が障害されるパターン。
短期記憶が障害されると復唱できなくなります。
行動障害型、言語障害型はどちらか片方だけが発症するのではなく、両方を持っている場合がほとんど。
アルツハイマー型認知症と異なり、認知機能の低下は顕著には表れません。
自分が病気であることを自覚できないため、医療機関への受診が遅れるそう。
もしも身の回りに疑われる人がいたら、早めに病院に連れて行きたいですね。
ではピック病患者の症例についてより詳しく見ていきましょう。
情緒が不安定に
直前まで笑っていても突然怒り始めたり、泣き始めたりと情緒が病的に不安定になります。
人格障害
温和だった人が怒りっぽくなったり、怒りっぽい人が温和になったり、無口な人が多言するようになったり、他人を思いやる気持ちがなくなったりと、これまで見たことのなかった人格になることも。
人格障害はアルツハイマー型認知症などでも見られる症状ですが、ピック病はより強く発現する傾向にあるそう。
理性や感情に障害が出るため、こうした症状が発現するそうです。
自制力低下
相手の話を聞かず(聞けず)一方的にまくしたてるようにしゃべってしまったり、短絡的な行動を取ってしまうなど自制することが難しくなります。
異常行動
万引き、他人の家に勝手に上がり込む、衝動的に物を破壊してしまうなど社会生活から逸脱した行動を多く取るようになります。
態度
人を無視したり、小馬鹿にしたような態度をとったり、ひねくれた態度をとってしまうなど、対人で態度が病的に悪くなります。
病院に行っても意思の質問に答えなかったり、答えても不真面目に回答したりするようです。
滞続症状
意味もなく同じ内容の発現を繰り返したりします。
時刻へのこだわり
決まった時間に決まったことを行うような行動を取り始めます。
例えば天候に関係なく、15時になったら散歩など。
「今日は雨だから辞めておきな」と止めたりすると怒りだして、暴れることもしばしば。
難病・ピック病の治療・ケアとは?
ピック病はどのような治療を行っていくのでしょうか?
現時点で根治する治療法は存在しないそうです。
しかし行動障害を改善するため、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の使用が推奨されています。
医学論文によっては有効ではないとするものもありますが、日本では脱抑制や不適切性的行動については、選択的セロトニン再取り込み阻害薬が使用されます。
このほか、コリンエステラーゼ阻害薬を用いたり、NMDA受容体拮抗薬などを用いるケースも。
薬物両方以外だと、残った能力を利用して行動療法的介入、家庭指導などが効果を発揮する場合も。ただし、人格・行動・感情の3方向で障がいが発現するため、家族の負担が非常に大きくなります。
家族がしっかりと病態を理解することも重要です。
発病後の生存期間は6年から11年。
診断がついてからは3年から4年と言われています。
アルツハイマー型認知症よりも進行が速く、生存期間が短いのです。
だからこそ、早期の医療機関受診がカギ。
もしも身近な人で疑われる人がいたら、速やかに病院に連れて行きましょう。
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