夢の若返りホルモン「マイオカイン」

最近、筋肉から分泌される「マイオカイン」というホルモンが、「若返りホルモン」として注目を集めています。マイオカインの働きとその増やし方について紹介します。

マイオカインとは

◎筋肉から分泌されるホルモン

健康的に長生きするためには、生活習慣病を改善・予防することが重要です。そのために欠かせないのがウオーキングなどの適度な運動。運動している人は、していない人と比べて、がんや認知症になるリスクが少なくなるといわれています。
その要因の一つが、筋肉を動かすことで分泌される「マイオカイン（筋肉作動物質）」というホルモン物質であると、最近の研究で分かってきました。このマイオカインとは「複数のホルモン物質の総称」で、その一部にはがんを予防する働きを持つもの、脳の機能を改善する働きのあるものなど健康に良いとされる物質が含まれており、各方面から注目されています。

◎がん予防からスキンケアまで

分泌されたマイオカインは、血流によって運ばれて肝臓、大腸、腎臓、脳、皮膚などの臓器に作用すると考えられています。マイオカインの主な働きとしては、次のようなものが挙げられます。

①大腸がんなどのがん細胞を抑制する。
② 肝臓で脂肪を分解し、脂肪細胞を燃焼させる。
③動脈硬化を予防する。
④ 血液中の糖を取り込み、糖尿病を改善する。
⑤ 脳の神経細胞に作用し、認知症のリスクを低下させる。

このように、マイオカインの種類によって、さまざまな働きがあるとされています。
また、アンチエイジングに寄与するホルモンとして、脳から分泌される成長ホルモンがありますが、マイオカインにも成長ホルモンと同じような働きがあるといわれています。
最近、日本の化粧品メーカーが、肌の弾力やハリに必要なコラーゲンとマイオカインの関係性を研究しました。その結果、マイオカインが細胞活性を高めてコラーゲン産生を促し、肌の弾力性を高めることが分かったのです。

マイオカインを増やす

◎筋肉を動かそう

マイオカインには、「常に筋肉から分泌されているもの」と、「筋肉を動かすことで分泌されるもの」の2種類があります。積極的にマイオカインを分泌させるためには、運動することで筋肉量を増やしたり、筋肉の質を良くしたりすることが大切です。
筋肉の多くは太ももやふくらはぎなどの下半身にありますが、人間の筋肉量は40歳ごろからどんどん低下していき、特に下半身の低下率は上半身よりも大きくなっています。筋肉量が減ればマイオカインの分泌も減少するので、運動を続けて筋肉を維持することが不可欠です。

◎スロースクワットを毎日

筋肉を動かすことで体に良い物質ができると考えれば、運動を続けるモチベーションも上がるはずです。
そこで、マイオカインを効果的に分泌するための運動としておすすめなのが、スクワットです。自宅で気軽に取り組め、下半身の筋肉を効率良く鍛えることができます。1度に出るマイオカインの量には限りがあり、週1回のハードな筋トレより、スクワットのような負荷が軽い運動を毎日続けるほうが効果的です。スクワットは、ゆっくりとした動作で行う「スロースクワット」が推奨されています。

①肩幅程度に足を開く。
② 太ももが床と水平になる位置まで息を吸いながら、ゆっくりと腰を落とす。
③ 息を吐きながら、時間をかけて立ち上がる。

①〜③を1日10回ほど行います。ポイントは両腕をだらんと垂らして、腕の反動を使わないようにすることです。ゆっくり行うことで、太ももの筋肉に負荷がかかり、良い運動になります。
また、スロースクワットをウオーキングなどの有酸素運動前に行えば、より運動効果が高まります。
マイオカインは下半身の筋肉から分泌されることが多いので、簡単にできる運動を毎日の習慣にしましょう。