第34部・第3回 タブレットならではの新技術とは?
第34部 タブレットで楽しむ「○○の秋」
第3回 タブレットならではの新技術とは?
●講座で使用しているタブレットPC
「大江戸ぱそこんライフ」
【登場人物紹介】
デジ形平次…江戸中に名を知られた腕利きの岡っ引。意外にも趣味はパソコンで、事件のない時は日がな一日ノートパソコンに向かっている。
アナ六…デジ形平次の子分で、名前のとおりのアナログ人間。パソコンを使いこなせるようになりたいが、いつもトンチンカンなことを言ってデジ形を呆れさせている。
ミドリ…デジ形平次の女房。パソコンに関してはデジ形より詳しいというのがもっぱらの噂。
彼らがお送りする時空を超えた『NEWぱそこんライフ講座』、さて今回のお話は……。
ノーベル賞と液晶ディスプレイの関係は?
アナ六
「いやあ、やりましたね、今年も日本人がノーベル賞を取りましたぜ!」
デジ形
「おう、めでてえな。毎年取っているような気もするが、今回は2年ぶりか」
ミドリ
「2008年からは1年おきに取っているから、そんな気がするんだね。ところでアナ六は、どんな研究が受賞の対象になったのか知っているのかい?」
アナ六
「ええっと、何か青い光を作ったとか……」
デジ形
「それを言うなら青色LEDの発明だ。いつもは難しい研究で訳がわからないことが多いが、今回は身近にあるものだから、わかりやすかったぞ」
アナ六
「それって、電球に青いセロハンをかぶせて光らせるのとどう違うので?」
ミドリ
「実際は電球の熱でセロハンが溶けるかもしれないからマネしちゃダメだよっ」
デジ形
「そりゃあ、普通の電球とは全然違うぞ。『LED』というのは『発光ダイオード』とも言われ、半導体に電気を流すことで発光する。LED電球ぐらいは知っているだろう?」
アナ六
「省エネで長寿命ってヤツですね。でもあれは青色じゃなくて白色ですぜ」
デジ形
「青色LEDが開発されたから、白色LEDの開発も可能になったんだぞ」
アナ六
「ムムム、何だか話が難しくなってきましたね」
デジ形
「『光の三原色』を知っていれば簡単な話だ」
アナ六
「三原色ってえのは赤・青・黄色のことで?」
デジ形
「それは『色の三原色』だな。光の三原色は赤・緑・青だ」
アナ六
「へえーっ、光の色は違うんですね」
デジ形
「光の三原色を重ねると、白色の光になる。つまり、白色LEDを作るには、赤・緑・青の3色のLEDが必要ってことだ」
アナ六
「そこで青色LEDが出てくるわけで」
デジ形
「うむ。3色のうち赤と緑のLEDは何十年も前に開発されていたが、青色だけは難しくてなかなか実現できなかった。その開発に成功したってのが授賞理由だ」
アナ六
「なるほど、青色LEDができたおかげでLED電球ができて、世の中を明るく照らすようになったんですね」
デジ形
「LEDが用いられるのは電球だけじゃねえぞ。自動車のライトや懐中電灯に駅の電光掲示板、信号機ってのもあるな」
ミドリ
「クリスマスが近くなると、青い光の装飾照明も見かけるようになるね」
アナ六
「あのピカピカ光るクリスマスの飾りも、いつの間にかLEDに替わっていたんですね」
デジ形
「あと忘れちゃならねえのが、パソコンやタブレットの液晶ディスプレイだ」
アナ六
「へえーっ、液晶ってのはLEDでできていたので?」
デジ形
「そいつは違うぞ。液晶を照らす『バックライト』に白色LEDが使われているんだ」
アナ六
「そりゃあ、どういう仕組みで?」
デジ形
「液晶ってのはそれ自体では発光しない。液晶表示の電卓や時計を思い出すとわかるだろう」
ミドリ
「電卓や昔のワープロは、薄暗い画面に文字や数字が浮かび上がる感じだったね」
デジ形
「だが、それではカラーも扱うようなパソコンの表示装置としては不十分だ。だから『バックライト』で液晶を背後から照らすようになったんだ」
アナ六
「そんなところにも白色LEDが使われているんですね」
デジ形
「といっても、白色LEDが使われるようになったのはここ数年のことで、それ以前は別の照明部品を使っていたんだ」
アナ六
「LEDに換えて何かいいことがあったんですかい?」
デジ形
「さっき自分で言ってたじゃねえか。LEDに換える最大のメリットは、消費電力が少ない、つまり省エネになるってことだ」
アナ六
「あっ、そうか、そこはLED電球と同じなんですね」
デジ形
「これによってパソコンやタブレットの消費電力が低下し、バッテリー駆動時間が長くなったってわけだ」
アナ六
「タブレットを電源コードにつなぎながら使うのは不便だから、バッテリーの駆動時間が長くなるのはいいことですねえ」
デジ形
「うむ。この白色LED以外にも、タブレットにはタブレットならではの新技術が取り入れられているぞ」
アナ六
「へえーっ、タブレットなんてパソコンからキーボードを取っ払ったものとばかり思っていましたが、それだけじゃないんですね」
デジ形
「知識として知っておいても損はねえから、これからタブレットの中にあるさまざまな新技術を解説してやろう」
アナ六
「でも、難しい話は勘弁ですぜ」
衛星の電波から位置を測定する「GPS」
デジ形
「さっきアナ六は、パソコンからキーボードをなくしたものがタブレットだと言っていたが、パソコンにはなくてタブレットに搭載されている技術ってのもあるぞ」
アナ六
「はて、あんな小さくて薄いタブレットにどんな技術が入っているので?」
デジ形
「いろいろな『センサー』だ」
アナ六
「タブレットにはいろいろな線が通っているので?そりゃあ電子機器だから電気が通る線が必要でしょうが……」
デジ形
「線じゃなくてセンサーだ。ものの動きや光や音、温度など、さまざまなものの変化を検知する仕組みだ」
アナ六
「ムムッ、ちょいと難しくなってきましたぜ」
デジ形
「センサーってのは身の周りにいくらでもあるぞ。たとえばエアコンで温度の設定ができるのは、温度センサーが働いていて温度が設定より高かったら冷やすようになっているからだ」
ミドリ
「それは冷房の場合で、暖房は逆だね。それから洗濯機が全自動なのも、炊飯器でご飯がおいしく炊けるのも、水量や温度など、いろいろなセンサーが働いているおかげだよっ」
アナ六
「へえーっ、あっしたちの周りはセンサーだらけだったんですね。それでタブレットについているのはどんなセンサーなので?」
デジ形
「うむ、まず自分の位置を測定する『GPS』ってのがあるんだが、聞いたことはねえか?」
アナ六
「いえ、まったく」
デジ形
「これは人工衛星からの電波を受信し、位置を測定して地図アプリなどで表示する仕組みだ。カーナビで現在位置を地図上に表示するときにも使われているぞ」
アナ六
「衛星の電波ですかい?そいつは途方もない話で」
ミドリ
「衛星放送ってのもあるんだから、腰を抜かすような話じゃないよっ」
デジ形
「GPSを利用すれば、外で写真を撮るときに、その位置情報を写真のデータに加えることもできるぞ」
ミドリ
「GPS機能のついたデジカメもあるしね。どこで写真を撮ったのか、すぐにわかるってことさ」
アナ六
「そいつは便利なことで。でも、撮った場所ってのはどうやって見ることができるんですかい?」
デジ形
「うむ、いろいろな方法があるが、東芝のパソコンやWindowsタブレットに搭載されている『思い出フォトビューア』なら、地図表示されるほか、場所ごとに写真をグループ分けする機能もついているぞ」
アナ六
「ええっ、思い出フォトビューアなら前に教わりましたが、そんな機能もあったんですかい?」
デジ形
「新バージョンで追加された機能だ。このアプリはバージョンアップのたびに機能が追加され、どんどん面白くなっていくな」
タブレットが方位磁石になる「電子コンパス」
デジ形
「もうひとつ位置を測定するセンサーに『電子コンパス』というものがある」
アナ六
「コンパスといえば、学校で円を描くときに使いましたね、懐かしいなあ」
デジ形
「製図のコンパスじゃなくて、方位磁石のほうだ」
アナ六
「ああ、磁石を近づけて、針をクルクル回して遊ぶヤツで」
ミドリ
「方角を知るための道具なのに、そういう下らないイタズラをしていたんだねっ」
デジ形
「ガキの頃の思い出はともかく、電子コンパスというのも、基本的に方角を知るためのセンサーだ」
アナ六
「ええっと、タブレットの中に方位磁石が入っているので?」
デジ形
「いや、電子コンパスは『地磁気センサー』とも呼ばれ、地球が発している磁気を検知する電子部品で、それをもとに方位を算出しているんだ」
アナ六
「タブレットで方位がわかると、どんないいことがあるので?」
デジ形
「タブレットではなくカーナビの場合だが、電子コンパスによってどちらの方角へ向かっているか、車の進行方向を検知できる。それによって、進行方向が常に上になるようにカーナビの地図を回転させるわけだ」
アナ六
「なるほど、そんなところで役立っているわけで」
デジ形
「タブレットでもGPSやほかのセンサーとの組み合わせで働いているが、非常にわかりやすいアプリがあるので紹介しよう。『電子コンパス(細密版)』っていう無償のストアアプリだ」
アナ六
「『電子コンパス』ってそのままじゃねえですか」
デジ形
「内容もそのままで、方位磁石がタブレットの画面に表示され、方角がわかるって仕組みだ」
アナ六
「でも、方位磁石なんてめったに使いませんぜ」
デジ形
「自分が住んでいるところなら方角はわかるが、旅行先ではわかりにくいじゃねえか。そんなときにこのアプリを使えば、北枕を避けることもできるぞ」
ミドリ
「インストールしておいても損はしないだろうねっ」
アナ六
「しかし北枕とは、親分も迷信深いですねえ」
デジ形
「ほっとけっ!」
動きがわかる「加速度センサー」と「ジャイロセンサー」
デジ形
「タブレットの特徴として、縦に持てば画面が縦型になり、横にすると画面も横型に切り替わるってのがあるだろう。あれもセンサーの働きによるものだ」
アナ六
「へえーっ、タブレットが縦になったり横になったりするのがわかるので?」
デジ形
「あれは『加速度センサー』というもので、重力を検知して上下を判断しているんだ」
ミドリ
「だからタブレットが縦でも横でもひっくり返しても、画面は必ず上を向くようになっているんだね」
アナ六
「へえーっ、そんな仕組みがあったとは」
デジ形
「加速度センサーってのは、一般には加速度や振動の計測に使われる。例えば自動車のエアバッグも加速度センサーを利用した仕組みになっているぞ」
アナ六
「エアバッグってえと、事故を起こしたときに座席の前から出てくるプァーッとふくらむ風船みたいなヤツですね。それとどういう関係が?」
デジ形
「自動車が何かにぶつかったときは、当然速度が急激に低下するだろう。それを加速度センサーが検知して、瞬間的にエアバッグをふくらませるわけだ」
アナ六
「センサーってのはあっしらの身の安全を守るのにも役立っているんですね」
デジ形
「もうひとつ、動きを検知するセンサーとして『ジャイロセンサー』ってのも搭載されている。こちらは物体の回転や向きの変化を感知するセンサーだ」
アナ六
「ムムム、難しくなってきたような」
デジ形
「まあ、オレも専門家じゃねえから、わかりやすいところだけを説明しよう。例えばデジカメで手ブレ補正機能ってのがあるが、それはこのジャイロセンサーを利用しているそうだ。カメラを持つ手の微妙な動きを検知するんだろうな」
アナ六
「こりゃあカメラの撮影がヘタなあっしにはありがたい機能で」
デジ形
「あとカーナビでは、交差点などで曲がった角度を検知して、現在位置の測定に利用している。さっき言ったGPSや電子コンパスとあわせて、より正確な位置を割り出せるようにしているわけだ」
アナ六
「カーナビにもいろいろなセンサーが使われているんですねえ」
デジ形
「あとアナ六が得意なところでいえば、ゲーム機だな」
アナ六
「はて?……そういえば、コントローラーをテニスのラケットのように振ってテニスをしたり、画面の中のキャラクターが自分と同じ動きをするってのがありましたね」
デジ形
「そうだ。それはジャイロセンサーや加速度センサーがコントローラーの中に入っているってことだ」
アナ六
「へえーっ、何も考えずに遊んでいましたが、そんな技術が使われていたとは。でも、それがタブレットになると、どんなところに使われているんでしょう?」
デジ形
「うむ、例えば第33部・第11回で紹介したカメラアプリのパノラマ写真だ。これはタブレットをゆっくり動かすと自動的に連続撮影され、最終的にそれらを合成してパノラマ写真を作るという仕組みだ。これもタブレットの傾きや動きをジャイロセンサーや加速度センサーで検知しているんだろうな」
ミドリ
「完成したパノラマ写真を見るときも、タブレットを傾けると自動的に写真の角度が変わるモードがあるけれど、あれもジャイロセンサーや加速度センサーの仕組みを利用しているんだろうね」
アナ六
「センサーってのは面白いこともできるんですねえ」
デジ形
「あと、忘れちゃならねえのが東芝のパソコンやWindowsタブレットにインストールされている『思い出フォトビューア』だ。あれの中に入っている『おもいで小槌』ってのを覚えているか?」
アナ六
「確かタブレットを振ると画面の中に写真が降ってくるって仕組みでしたね。なるほど、あれもセンサーでタブレットの動きを検知しているわけで」
デジ形
「その通りだ。なかなかわかってきたじゃねえか」
アナ六
「いやあ、白色LEDから各種センサーまで、タブレットにはいろいろな技術が使われているんですね」
ミドリ
「もちろん今回紹介した以外にもたくさんの技術が取り入れられているよっ」
デジ形
「技術がわかれば使うのもいっそう楽しくなるだろう?」
アナ六
「はいっ、あっしも独自の技術を開発してノーベル賞を取りたくなりましたぜ」
ミドリ
「そりゃあ、壮大すぎる夢だねえ」
デジ形
「いくらなんでも今からノーベル賞ってのはムリじゃねえか?」
アナ六
「『あきらめなければ夢は叶う』って言うじゃねえですか」
ミドリ
「そもそも基礎学力は大丈夫なのかい?英語もしゃべれないとダメだよっ」
アナ六
「そう言われるとちょいと自信がなくなりますね。やっぱりダメか……」
デジ形
「やれやれ、『あきらめたらそこで終わり』だぞ」
アナ六
「トホホ、次の夢を探しにいきますぜ」
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