実家の家や土地は最大の「遺品」に。放置で空き家化も。
「いつか来るその時のために終活を始めた。身の回りのものは片付いたけれど一番大きい家はどうなるんだろう」
不要なものや、今ならお金になりそうなものはすべて整理してもとに残ったのは現金だけ。そう思って意外と見落としがちなのが不動産です。
一昔前は遺品といえばものが中心でしたが、今や不動産も「遺品」と呼ばれるのです。
まだまだ現役世代の方にとっては実家がそれに該当するというケースも多いと思います。いざ家を引き継いでも、2件も3件も家はいりませんよね。結果として手に余ってしまい放置されるケースも珍しくないんです。
最近では周辺への悪影響や犯罪の増加などから、空き家問題と呼ばれています。
売りたくても買い手がつかない不動産。昔は高い土地も今では…
[ライブドアニュース]
実家の空き家問題「三重苦」 住めない、貸せない、売れない https://t.co/8ZB3TxRwM3— ライブドアニュース抜粋 (@ldnews_head) 2017年12月28日
日本経済新聞社が2017年の夏、終活について読者にアンケートを取ったところ、エンディングノートや葬儀、納骨堂や墓などと並んで不動産の処分に関する回答が多く寄せられたそうです。
「空き家の実家を苦労の末になんとか売却した」「田舎の不動産は売れないので家の取り壊しから土地の売却までが大変だった」「土地を更地に戻すだけで数千万の費用がかかった」というもうすでに処分を済ませた人の苦労話もあれば、「田舎の家の処分できない」「なかなか売れてくれない」と言ったらぼやき声も多数あったそう。
どの話も共通するのは、田舎の不動産はなかなか売れないということ。不動産の処分は容易ではないのです。
神奈川県に住む会社員のKさん(57歳)もそのひとりだそう。3年以上にわたった土地売却の経緯を辿ってみると……。
「80代の父親が弱ってきたので法定後見人をつけようと財産を調べたのが土地処分のきっかけ」とKさんは振り返ります。
2013年夏のことだったそう。
調べていくと、以前に実家があった場所である千葉県房総半島に土地があり、面積は400平方メートル弱あったがその一部に抵当権が設定されていました。
相手は農協の前身である農業会。祖父が生前に借金をした見返りとして抵当権が設定されたそうです。
土地を有利に処分するためにはまずは抵当権を外す必要があります。ところがご存知の通り農業会はすでに解散。借金を返したかどうかすらもわからなかったそう。
頭を抱えたKさんは2014年ハルに弁護士に相談。交渉は農業会の清算人が相手ですが、こちらも既に亡くなっていました。そのため裁判所に新たな清算人の選定を申し立てました。
同年8月。新たな清算人が決まりようやく手続きが進む、とほっとした直後に今度は父親が亡くなってしまいます。葬儀を執り行い、死後の手続きもこなしながら、土地の相続登記を済ませました。結局祖父の借金は既に時効で支払う必要がないということがわかりました。2015年1月にようやく抵当権を抹消し土地を売却できることになりました。これだけ手間をかけてやっと前半戦なんです。
地元の不動産業者ではなかなか売れない
【住まいの処方銭】空き家になった実家を売る 個人で売却できるサイト「家いちば」 https://t.co/WLqOGwVod9
— zakzak (@zakdesk) 2018年2月1日
2015年6月、知り合いに紹介してもらった地元の不動産業者に売却を依頼。
「昔は1千万円の値がついた土地ですが、今はそこまで目がつかないだろう」と、Kさんは希望価格を500万円としました。
ところが半年経っても一年経っても何の音沙汰もなかったそう。
不動産業者に確認したところ、周辺に声をかけたが良い返事はなかったと言います。思案したKさんは、別のルートで売却先を探したところ250万円なら買う、という業者が見つかりました。そこで、地元業者に「250万円で東京の業者に売りたい」と伝えたところ、地元不動産業者は慌てて「250万円で買いたい」と連絡をしてきたそうです。
そこからはトントン拍子に話が進み2016年末、ようやく土地の売買契約が成立し所有権移転登記も済ませられました。
しかし売却に伴う諸経費が140万円を超え、結局手元に残ったのは100万円強。Kさんは「地元の不動産業者に頼んでもなかなか売れない。多くの売買情報や幅広いネットワークを持つ大手じゃないと話が進まないと知った」と話します。結局その土地は今も「売地」の看板が立っているんだとか。
相続したが利用方法がない現実
相続した空き家の対処法 管理代行、修繕費助成を活用 : NIKKEI STYLE https://t.co/TKQTzPeZYO
— 良い相続.com公式 (@yoisouzoku14) 2018年3月9日
こうした話は現代では珍しい話ではありません。相続などで土地や家屋を引き継ぐ人は増えているのに、土地や家屋を購入する人は減ってきているのです。
親、子、孫と3世代がその家に同居しているのなら、親が亡くなっても子どもはそこに住み続けるでしょう。または、子どもの独立に伴い、親が利便性の良い土地に住み替えていたりするなら、こうした問題は起きにくいのです。
ところが、1970〜80年代に家を建てた人たちは、持ち家信仰が強く、自分の家に対する愛着も一際強いそう。家族が最も多い時に建てたその家に、夫婦ふたりになっても住み続ける人も少なくありません。
核家族化が進み、子どもはすでに離れた場所に家を構えていた場合、結局は持て余す結果になってしまうのです。家の解体にも多額の費用がかかるだけではなく、売買にもかなりの労力がかかってしまいます。
せっかく終活を始めたのなら、最期の家の処分まで見越して家族としっかり話し合っておいたほうが良さそうですね。
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