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空き家の放置、「税金6倍」はウソ!

2015年に「空き家対策特別措置法」が施行され、市町村は適正な管理がなされていない空き家を「特定空き家」に指定できるようになった。

特定空き家は、固定資産税の「減額特例」が適用されない。その結果、「空き家を放置すると税金が6倍になる」と思い込んでいる人が多いようだ。

2033年には3軒に1軒が空き家になるかも…

土地の税金には「負担調整措置」がある

実は、土地に対する税金には「負担調整措置」制度がある。負担調整措置は、固定資産税の急激な上昇で、税負担が重くなりすぎないように調整する仕組みだ。

住宅用地の負担調整措置については、 たとえば200平方メートル以下の小規模住宅用地では、固定資産税の評価額(地価公示価格の7割)の6分の1が「本則課税標準額」(本来の課税標準額)とされる。つまり、その土地に住宅が建っていれば6分の1に減額されるわけだ。

この本則課税標準額(A)と前年度の課税標準額(B)を比べて、B ÷ Aが100%を超えるようなら、Aに引き下げるなどの負担を調整して課税標準額を決める。その課税標準額に税率を掛けて税額を算出する。

また、200平方メートルを超える住宅用地は、超えた部分が一般住宅用地として3分の1に減額される。都市計画税は、200平方メートル以下が3分の1に、200平方メートル超の部分が3分の2に減額される。

一方、家屋を取り壊して更地にすると、商業地と同じ「非住宅用地」扱いとなる。

非住宅用地では、地価公示価格の7割が固定資産税の評価額とされるのは住宅用地と同じだが、それがそのまま本則課税標準額とされ、その額の7割を上限として負担調整されて課税標準額が決まる。

たとえば、面積が150平方メートル、固定資産税価格が1平方メートルあたり120万円、課税標準額が上限の住宅用地(市街化区域内)の場合、小規模住宅用地なので、固定資産税は120万円×6分の1×1.4%(標準税率)=2800円。都市計画税は120万円×3分の1×0.3%(制限税率)=1200円で、合計4000円となる。

この住宅用地の家屋を取り壊して更地にすると「非住宅用地」になるので、固定資産税と都市計画税の合計額は120万円×0.7×(1.4+0.3)%=約1万4200円となる。

これを減額された場合と比べると、1万4200円÷4000円=約3.6倍にのぼる。つまり、通常であれば、「税金が6倍」にはならない。

空き家の「減額特例」が適用されないと…

「特定空き家」として減額特例が適用されなくなった場合も、更地の計算と同じになる。そのため、「税金が6倍」は間違い。正解は3~4倍程度だ。

現在、日本全国の8軒に1軒は空き家という調査結果があり、2033年には3軒に1軒という予測もある。「空き家の譲渡所得3000万円特別控除」など、国も空き家対策を講じているが、増加に歯止めはかかっていない。

空き家の原因は、いろいろ。少子高齢化で不動産の所有者が高齢になって老人ホームなどに移住して、家だけがそのまま残ってしまったり、家主が亡くなっても相続人がいなかったり、行方不明だったりするケースも少なからずある。新築物件が増えて、中古の家屋に買い手がつきづらく、売れても二束三文にしかならない、また解体費用すらない…… といったことがあるとされる。

とはいえ、特定空き家になって税金がどの程度増えるかはさておき、空き家を放置しておくのは金食い虫を飼っているのに等しい。売るか貸すか自ら利用するか、なるべく早く決断するのが賢明だ。(阿吽堂)

 


阿吽堂(あうんどう)
マネー誌編集者・ジャーナリスト。「マネージャパン」編集長、「マネープラス」の編集部長などを歴任。現在は雑誌・書籍・ムックなどを幅広く手がけるベテラン。

提供元:J-CAST会社ウォッチ

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