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大人の男が支持するお取り寄せサイトを作った男 東京都 萩原章史さん(55歳)

萩原章史さん

ゼネコンのサラリーマンから転身

 全国から選りすぐった食材を販売する「うまいもんドットコム」。主要な顧客層は45歳以上の男性という珍しいお取り寄せサイトだ。
このサイトを立ち上げたのが萩原章史さん。それ以前は、大手ゼネコンの猛烈サラリーマンだった。型にはまらない猛烈社員であるが故の挫折が、その後の食の事業につながっていく。
萩原さんは入社2年目で海外事業部の営業に配属されて、天津に赴任した。日中合弁ホテルを建設する仕事で、百戦錬磨の中国人を相手にするために、中国語も必死で学んだ。
 
 無事にホテルを完成させ、利益も順調という成果を引っさげて帰国すると、なんと、最も行きたくないと思っていた経理部に配属される。しかし、ここで身につけた商法監査や有価証券報告書作成のスキルが、後に会社経営に役立つことになる。
3年ほど経理で我慢して、そろそろ外へ出たいと希望すると、北米担当としてロサンゼルスへ赴任が決まった。任務はバブル崩壊の精算だから、何か物足りない。そこで、独断でメキシコ事務所を設立した。NAFTA(北米自由貿易協定)が締結されれば、ビジネスチャンスが到来すると踏んだのだ。
案の定、次々と建設される工場を受注できた。人事、企画、財務、営業戦略すべてを取り仕切り、当時、普及し出したeメールで副社長や社長に直接、提案も行った。その結果、一番よく知っているのは萩原だと、北米のことはほとんど任せてもらえる存在となった。

 しかし、突然、萩原さんは辞表を提出する。思う存分やり尽くしたという自信、ゼネコン不況で今までのような面白い仕事ができるとは思えないという判断、39歳になったこと、21世紀になったこと。これらが理由だった。
事業としては、今までの経験を生かした建設技術者の人材データバングを設立し、漫画『サラリーマン金太郎』のキャラクターを借りてプロモーションするというアイデアを考えた。思い切って作者の本宮ひろ志さんに打診すると、意外に、あっさりと内諾を得ることができた。だが、思わぬことでこの計画は頓挫する。厚生労働省のキャンペーンに『サラリーマン金太郎』が使われることになり、萩原さんの可能性が消えたのだ。すっかり気勢をそがれた萩原さんは、起業を諦めようと思った。とはいえ、負けん気が持ち前の萩原さん。やはり、できることはないかと考えはじめていた。

「食」は地方を元気にする手段

 そもそも「建築技術者の人材バンク」を作ろうとした理由のひとつは、地方には建設業以外にめぼしい産業がないことに気がついたからだった。地方を元気にする手段はないか。考えた末に思いついたのは「食」だった。
萩原さんは子供の頃から料理が趣味だった。「千切りをやらせたら、うまかったですよ。高校生の頃には魚をさばいていたし、受験勉強の夜食はほとんど自分で作っていました」。ゼネコンに就職が決まったのも、アルバイト先の割烹の女将が口を効いてくれたから。
これからはネットが主流と、インターネットを使った食品販売を手掛けることにした。
当時、すでに大手のネットモールはあったが、多くはバーチャル場所貸し業だ。出店が増えればモールの運営者は儲かるが、個々のショップへのアクセス数が増えなければ、出店側は儲からない。売れても売れなくても、決まった料金を負担しなければならならず、また、パソコンが苦手な出品者も多い。

そこで、「いい商品があれば、サイト制作も含めて、当社が全部サポートします」というサイトを作り、出店料ではなくて、売上手数料をもらう方法を採用することにした。
また、食にこだわりのある萩原さんとしては、自信をもって紹介できる優れた手づくり食材を厳選して販売したい。それには、いい生産者を探し出し、こちらからお願いして出店してもらう方法を取ろう。これが萩原さんの考えたビジネスモデルだ。

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