生涯現役を通すことができたのは音楽への情熱――朝比奈隆
亡くなる直前まで指揮台に立った
2001年に93歳で亡くなった大阪フィルハーモニー交響楽団の名指揮者、朝比奈隆さんは、死去する2カ月前まで演奏会で指揮棒を振っていました。
京都大学を卒業し、阪急電鉄の社員から音楽家に転身した異色の経歴の持ち主で、「晩年に絶頂期をむかえた」と言われるように、日本のブルックナー解釈の第一人者として広く知られるようになったのは、実に70歳を過ぎてからでした。
「80代になってからも、歳が増えていくにしたがって負担が増えたという意識は全然ありません」「やりたいことが次々浮かんできて、それが私の生きがい」と語り、86歳でアメリカの名門シカゴ交響楽団に客演。同オーケストラの記録を塗り替える最高齢の客演として話題となりました。
朝比奈さんの看板であった「ブルックナー」の交響曲は、1時間を越えるものが多いにもかかわらず、「座ってやるようになったら潔く辞める」と、最後まで立って指揮し、文字どおり「生涯現役」を貫いた人でした。
90歳に至って「これからは今まであまりやらなかった曲もやっていきたい」と語り、ロマンの塊である19世紀ヨーロッパ音楽は「枯れているとできるはずがない」と言い切った朝比奈さんを突き動かしていたのは、尽きることのない「音楽への情熱」でした。
やりたいことがあるから健康で長生きしたい
演奏では、1時間以上、立ちっぱなしで指揮棒を振らなければなりません。朝比奈さんは、「毎日歩いたり、体操したりするのは当たり前のこと」と、自宅のある神戸にいるときは、毎日プールに通い、水中歩行を行っていたそうです。
「1日でも長く生きて、1回でも多くの舞台に立つ。そのためには1歩でも前へ」。日ごろから健康に気をつけていたのは、やりたい音楽をやるためでした。音楽に取り組むために行っていた運動が、結果として、健康長寿を支えたのでしょう。
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